第70話 真空パック ページ21
◆
味の感想をあれこれ言いながら、楽しそうに食事をするAを見ている。ただそれだけで、さっきまで抱いていた不安や焦燥は跡形もなく消えてしまった。
まるで、魔法だ。
それか、Aがよく口にする『おまじない』ってやつだ。
とか、らしくないことを考えた。
「あっ、そうだ。見せたいものがあるんだけど…」
そう言って、Aはポケットからスマホを取り出した。
『待ってね〜』と言う、いつにも増してのんびりした口調が、凪いだ空気と柔らかに馴染む。
もう、合宿、これで終わりでよくねぇか？
こういうゆるい時間過ごすだけで、俺はいいんだけど。
「あった、あった。見てこれ」
バカなことを考えていた隙に、Aはお目当てのものを探し当てたようだった。
差し出されたスマホをジッと覗き込む。
「は？え？これ…」
驚いて、まともな言葉が出てこない。
俺の当惑を読み取ったAは、ケラケラと楽しそうに笑った。
「ね〜、びっくりしたでしょ。これ、超懐かしくない？」
スマホに映し出されていたのは、小さな俺が小さなAを姫抱きにしている写真だった。
こうなるきっかけでもあったあの日。
運動会のあのときの光景が、鮮明なまま、切り取られていた。
『何で？』と訊く間もなく、Aはそのワケを話してくれた。
「うちのお母さんがアルバム整理してたら見つけたんだって。私、ほら、お母さんにだけは影山くんのこと言ってるから…」
最後、照れたのか、耳を赤くしながら、Aはもう一度スマホに目をやった。
「まさか、写真があるとは思わなくない？お母さんが撮ったんだって。…ふふ、ファインプレーだよね」
その言葉を聞いて、ファインプレーで済ませてしまいたくないほど、Aの母親に感謝した。
俺たちが覚えていただけじゃなくて、ちゃんとあの日の物証がある。
恥ずかしいし、正直めちゃくちゃ照れ臭い。
人によっては黒歴史だもんな、こんなの。
でも、俺にとっては、紛れもなく大切な思い出。
色褪せないように、大事にとっておいた記憶。
あの日を思い出しながら、ほんの少し、今と重ねるだけで、胸が苦しくて甘くて痛くなって、また苦しくなった。
「これ、送っといたから、あとでじっくり見てみて。影山くん、超カワイイから」
「……ああ、そうする」
ニッコリと頬を緩める君に、小さく笑かけた。
形のない、けど確かに感じた愛おしさを、胸の奥に仕舞った。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜！！🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (
レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます！！！黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう！もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜！ (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう！好き！コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に！愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます！！！嬉しすぎて、もう泣いちゃう！！素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pomme | 作成日時：2022年1月20日 23時
