第36話 微かな期待 ページ36
．
夕食を食べた後も、まだ練習し足りない！とか言って体育館に駆けてく人が多数いた。
元気すぎない？？
まじ勘弁。私は無理。
そんな彼らを送り出しつつ、私は逆方向へ…。つまり、お部屋に向かいます。
ね、だってさ、仁花ちゃんと潔子さんと女子トークしなきゃだし…？♡
積もる話もあるんだから。
ん〜と伸びをしたちょうどその時、『A、ちょっといいか？』と、私を呼ぶ声がした。
振り向かなくたって、相手が誰だかすぐにわかる。
冷たくて落ち着き払った声。こんなふうに私に声をかけるのは、アイツしかいない。
「どうしたの？急に。うわっ、もしかして、影山くんも練習し足りない勢？悪いけど私、今日は付き合えないよ」
眉をひそめてそう言うと、影山くんは『そうじゃねぇ』と首を振った。
「あら、違うんだ」
「そうじゃなくて、その…」
いつになくモジモジしてる影山くん。それにちょっと戸惑う。
いつもならもっとこう、ガッと来るのに。
ほんと、どうしたんだろう。
「影山くん、私そろそろ……」
やんわりと急かすと、影山くんはハッとして、俯きがちに『あのな…A』と小さくつぶやいた。
何これ。
無駄にドキドキするんだけど。
絶対にそういう話じゃないってわかってるのに、心臓は激しく脈を打つ。
「えっ、うん、何？」
平静を装った。
わかってるのに、微かに期待してるこの時間がけっこう辛い。
影山くん、ほんと君って罪な人。
「あのな、A。その、お礼言いそびれたから……。補修、Aは出ねぇのについて来てもらったりして。だから、その……、あ、ありがとう…」
消え入りそうなほど、小さな声で“ありがとう”と言った君。
ねぇ、ほんと、らしくない。
お礼くらい、ふつうに言えばいいのに。変に期待なんかさせないで。
ねぇ、影山くん。
わかってる。わかってるよ。
現実は、そんなに簡単じゃないことくらい。
胸の痛みにも慣れたりするし。
「そんなの気にしなくていいのに」
バツが悪そうに目を逸らすを君を見上げて、笑ってみせた。
すると、影山くんは一瞬泣きそうな顔をしたあと、『ありがとうな』って、恥ずかしそうに微笑んだ。
それが妙にかっこよくて、目を逸らしてしまった。
このまま見つめてたら、たぶんもう引き返せない。
「Aならそう言うと思った」
「ぷっ、何それ。お見通し的な。やだなぁ」
「まあ、いいじゃねぇか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(プロフ) - 読み専さん» コメントありがとうございます！！頑張らなきゃ！ (2021年12月31日 20時) (
レス) @page39 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
読み専 - え、続き読みたい…更新待っております！！ (2021年12月31日 11時) (レス) @page42 id: 0067091e87 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑🍊さん» そうなんですwwめちゃくちゃ地味なところに謎のこだわりを詰め込んでます😎ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年11月21日 23時) (レス) @page35 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑🍊 - あと、今更気が付いたのですがタイトルの付け方もお洒落で、全部5文字になっているんですね😄応援してます！ (2021年11月21日 22時) (レス) id: e3fbbedd51 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑さん» ひえぇ！嬉しい…！褒められ慣れてないのでソワソワしちゃいます🥺密柑さん、もうほんとめちゃくちゃありがとうございます！ (2021年11月9日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pomme | 作成日時：2021年9月20日 23時
