第29話 怒らないよ ページ29
◆
Aはお人好しだ。
それもドが付くほどの。
そうじゃないと説明がつかねぇ、この状況。
本当なら先に東京に着いているはずなのに、俺の隣に座って楽しそうに窓の外の景色を眺めている。
「影山くん、昨日ちゃんと寝れた？」
「まあ、普通に」
「そっか〜。私なんかワクワクしちゃって全然寝れなくてさ」
Aはそう言って笑いながら、器用にあくびをした。
「怒らないのか？」
ずっと気にかかっていたことを訊いた。
自分の勉強の合間を縫ってせっかく勉強教えたのに、良い点取るどころか、赤点&補修。
しかもキャプテンに頼まれて補修の付き添い。
こんなのブチ切れ案件だろ。少なくとも俺なら、しばらくは口聞かねぇ。
なのにAはキレるどころか『怒るわけないよ』と微笑んだ。相変わらず、俺の眉間のシワの心配をしながら。
「だって、影山くん、いっぱい頑張ってたし。それに、赤点は取っちゃったけど、いつもよりできたって言ってたから、それって一緒に頑張った分がちゃんと発揮された証拠なんじゃないかな〜って……ね？だから、そんな渋い顔しないでよ」
Aはそう言って、ふにゃりと笑った。
その瞬間、不思議なくらい胸がぽかぽかした。
頑張ったとは言え、赤点は赤点だ。怒らない理由にはならない……はずなのに。
どこまでも甘いな、お前は。
Aがお人好しなのも、甘すぎるのも、たぶん俺相手にだけじゃない。
それが少し……気に食わねぇ。
本当に、Aは変なヤツだ。
「A、ありがとな」
声をかけても返事が無い。
ふと、隣に目をやると、Aは首をカクカクさせながら、いつの間にか眠っていた。
「あれ〜Aちゃん寝ちゃった？影山くんだっけ？ちょっとAちゃんに肩貸してあげな。そのままじゃ首痛めるだろうからさ」
運転席のミラー越しに冴子姉さんが言う。
それに従って、Aの頭を抱えるように、左手でぐいっと俺の肩に寄せた。
右肩に乗る自分のじゃない体温。
それを少し意識しただけで、なぜか鼓動が早くなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(プロフ) - 読み専さん» コメントありがとうございます！！頑張らなきゃ！ (2021年12月31日 20時) (
レス) @page39 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
読み専 - え、続き読みたい…更新待っております！！ (2021年12月31日 11時) (レス) @page42 id: 0067091e87 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑🍊さん» そうなんですwwめちゃくちゃ地味なところに謎のこだわりを詰め込んでます😎ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年11月21日 23時) (レス) @page35 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑🍊 - あと、今更気が付いたのですがタイトルの付け方もお洒落で、全部5文字になっているんですね😄応援してます！ (2021年11月21日 22時) (レス) id: e3fbbedd51 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑さん» ひえぇ！嬉しい…！褒められ慣れてないのでソワソワしちゃいます🥺密柑さん、もうほんとめちゃくちゃありがとうございます！ (2021年11月9日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pomme | 作成日時：2021年9月20日 23時
