我々は青春の主役である［2］ (ページ3)

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第五十二回ページ3

店内のほどよい騒がしさが遠く感じる。運ばれてきたケーキは確かに美味しそうなのに、どうしてもフォークを刺す気にはなれない。
そんな私をよそにパクパクと食べ進める大先生だが、不意にフォークを止め、私を見据えた。

「もしかして、答えてない事に罪悪感とか感じてる？」
「……それは」

銀のカトラリーをこちらに向け、言った。

「ええか、男はな、惚れた女には特段優しいんや。ゾムやってAを責めたりせん。むしろ言葉通りいくらでも待つで」
「でも、それは！」
「その場で適当に返されるよりも、じっくり考えて出した答えの方が、何倍も嬉しい。それがたとえ振られると分かっていてもな」

私がトントンの事が好きなことをゾムは知っていた。知っていた上で、あの場で言ってくれた。それは本当に勇気のある事だろう。

『気にせんといて。俺、Aの笑顔好きやから。……笑って、くれへん？』

「中途半端な答えは出すなよ」
「……うん。ありがとうね、大先生。元気出た」
「別に。Aがヘタレなんは昔からやろ」
「大先生だってびーびー泣いてたくせに」

グルッペンとも、オスマンともトントンとも違う距離感。いつも私の斜め前を歩いてくれて、遅れる私に気付いては二、三口の悪態をつきながら隣を歩いてくれた。
今日だって電話口では怒鳴っていたのに、集合時間の五分前には息を切らして待っていてくれた。

「……何その顔、気持ち悪う」
「他の女の子にはそういうこと言わないくせに」
「Aの親友……篠原やったっけ？あれくらいお淑やかな子なら許した」
「違うし、我が親友はお淑やかで可愛いの！」
「へーへー」