我々は青春の主役である［2］ (ページ1)

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第五十回ページ1

口に残ったりんごはやけに酸っぱくて、でも、甘い飴は私の脳をどろどろに溶かしていく。

「……A」

ゾムは真剣だった。私は生まれて初めての告白に戸惑ってしまい、何も言えずにいた。
何か、何か言わないと。気持ちだけがはやり、息だけが口から溢れる。

「……いきなりでごめんな。でも、さっきAがトントンと話してるのを見た瞬間、めちゃくちゃ焦ったんや。トントンに取られてまう。Aが悲しい顔をしてる。そう思うと、いても立ってもいられなかった」

なあA、恋ってなんやろな。

ゾムは悲しそうな顔で、くしゃりと笑ってみせた。

「片思いしてる人に片思いなんて、俺、どうかしてるよな。でも、俺はAと付き合いたい。誰よりも好きだから」

私がすぐに頷けないのを知ってか、ゾムは俯く私の頭に手を置いて、髪型が崩れないようにそっと撫でてくれた。

「……ゾム、私」
「返事、待ってる。焦らないで考えてほしい」
「ごめ、ごめんなさい……せ、っかく、言ってくれたのに、わ、私、何も」
「気にせんといて。俺、Aの笑顔好きやから。……笑って、くれへん？」

私はゾムを見上げて頑張って笑ってみせた。とてもひどい顔だろう。それでもゾムはありがとうと笑い返してくれた。

「今日はデートなんやし、これくらいは許してや」

恋人繋ぎで二人、花火を見上げる。

「花火、綺麗やなあ」

「……うん、綺麗」

「言うの忘れとったけどさ」

「うん」

「浴衣、似合ってる」

「……ありがとう」