８７(seungkwan) ページ13
一瞬だけ言葉を切って、助けを求めるように僕のほうを見たAヌナは、あのときのヌナはただの一人の人間としてのヌナだった。番組の雰囲気やコンセプトにほだされていたのかもしれない。いつもならカメラの前で絶対に崩すことのない"Chocolateのサラ"としての顔を、ヌナはあの少しの間だけ取っ払っていた。
『だってミンギュは...だってミンギュは大きいから、そういうのしにくいでしょ？』
言葉を選んだだけ、きっとそういう風に周りは思ったのかもしれない。でもヌナの正面に座って、あの目を見た僕にはわかる。Aヌナはもっと何か別のことを言おうとしてやめた。それはきっと、その場で言うべきではないことだったはずだ。
「Aヌナ」
「ん？」
ロケが休憩に入って、たまたまバンの中で二人きり。ミンギュヒョンはトイレに行っていて居なくて、眠そうに目を瞬かせているヌナの横顔に声をかけてみる。
「ヌナ、さっき本当はなんて言うおうとしたの？」
「さっき？何の話？」
「"だってミンギュは特別だから。"とか？そう言おうとした？」
そこでやっと、ヌナは僕に目を向けた。一切の感情の読み取れない目をしてじっと僕を見ている。
「そんなわけ、ないじゃん」
小さく漏らした言葉は震えていた。ヌナはいつも、たくさん我慢して感情を犠牲にする人だ。そういう風にしかできない人だってことを、僕は知っている。
「それじゃあまるで私が...スングァナ、さっきのは本当に違うんだよ。汚い言葉、使いかけただけだから」
汚い言葉なんて、一度も使ったことがないくせに。喉まで出かかったそんな言葉をぐっと堪える。ちらりと視界に入ったヌナの綺麗な指が震えていた。目が不安そうに揺れている。違う、そんな顔をさせたかったわけじゃない。
「そうだね。ヌナ、ごめん」
震える手を握れば、夏だというのにとても冷たかった。ふっと小さく息を吐き出して、ヌナはゆっくりと手を離した。
「...スングァナ、私が弱いうちはまだ知らないふりしておいて」
私もトイレに行ってくるね、とヌナは逃げるようにバンを出た。入れ替わるようにミンギュヒョンが帰ってくる。
「ヌナとなんかあった？」
鋭い視線を投げかけてくるミンギュヒョンを見て、この人は本当にヌナのことが好きなんだなと思った。でもヒョン、僕はAヌナのほうがもっと大好きだから、ヌナの言うことは守ってあげなくちゃいけないんだ。だから悪く思わないで。
「何もないよ。考えすぎじゃない？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3585人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆび - この作品に出会えてよかった……ありがとうございました………Chocolatちゃんたちの未来に幸あれ……🌸🌸続きが読めないことは残念ですが、またどこかでお会いできる日を楽しみにしております！！ (2022年12月3日 18時) (
レス) @page41 id: b9570136cf (このIDを非表示/違反報告)
smallpeach(プロフ) - 久々に読ませていただきました。この作品本当に大好きです。完結表示が出ていて寂しい気持ちもありますが、ここまで続けていただいてありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています。 (2022年10月4日 0時) (レス) @page41 id: eabc0d3a73 (このIDを非表示/違反報告)
pn_ba1(プロフ) - こちらのお話はもう更新されないのでしょうか？ (2022年8月21日 1時) (レス) id: d4e59b8d7f (このIDを非表示/違反報告)
yui.(プロフ) - 大好きな作品なので更新とても嬉しいです！これからも応援しています！＾＾ (2021年11月16日 7時) (レス) id: 16bd37e790 (このIDを非表示/違反報告)
ネプコ - とても面白くて一気読みしました！！！興奮が止まりませんwwお忙しいかとは思いますが、体に気をつけて更新頑張ってください！応援しています❣ (2021年10月4日 19時) (レス) @page38 id: 171786c0ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朔
| 作成日時：2018年3月22日 18時
