10話 ページ10
虎哉は周りを見て蒼龍との距離を縮め先程よりも小声で話した。
「なにかあったときのことを考えて瞳子監督にお前のことを少し話した」
『兄さんのことですか?』
「あぁ。お前の口から言った方がよかったか?」
『いやいや、そんなことないです。話して貰ってありがとうございます。私から言わなくてはいけないことなのに』
少し陰を落とした様子の蒼龍に声をかけようとしたところで「準備できたようね」と横から瞳子が話しかけた。
「蒼龍さん、貴方の事情は詳しく聞きました」
『はい』
「それでも私たちと来てくれる?」
『ええ、一度決めたことです。兄さんも同じことを言いますよ』
先程とは打って変わり強い信念をもった瞳で蒼龍は瞳子を見上げた。その瞳をみてフッと微笑むと「分かったわ」と頷いた。
まだエイリア学園から襲撃予告はないため一度稲妻町へ戻ることにした雷門イレブンはキャラバンに乗り込み始めた。蒼龍が最後に乗り込むことになり摺揚原イレブンとの別れを惜しんでいた。
「気をつけてね」「頑張ってこいよ」などと声をかけられている。その様子をキャラバンの中から見ていた雷門イレブンは彼女に寄せられている信頼の大きさに感心していた。
グラウンドの奥の方から間宮が袋を抱えて走ってばつが悪いというような顔をしている蒼龍の元まで来るとその袋を押し付けた。
全速力で走ってきたのだろう咳き込んでいる。その背を擦りながら片倉が袋を蒼龍からヒョイと取り中身を見た見ると途端に呆れたような顔になり蒼龍に戻した。
「何入ってるんだあれ?」
「さあ…」
「食べ物ッスカね?」
なにやら小言を言われたらしい蒼龍が苦笑いしている。片倉がため息をついたところで蒼龍は部員に向かってなにか言うと、キャラバンの中にいても聞こえる声量で「「はいっ!」」と返事をする部員の声が響いた。
最後に片倉と間宮と向き合い少し話したあと軽く頭を下げた。キャラバンに乗り込むときに後ろを振り返り『行ってきます!』と笑顔で言った。
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作者名:南極 | 作成日時:2019年11月29日 20時