25話 ページ25
思わず春奈は口を手で覆い、木暮はあの小生意気な態度はどこえやらボールを抱えて不安げな表情をしている。それほどイプシロンは圧倒的だった。
「あいつら、本当に6分で決めやがった」
6分、それは試合中にデザームが「この試合6分で終わらせる！」と声高らかに宣言した時間だった。
「これがファーストランクチームの力…！」
「ジェミニストームとは比べ物にならないくらいでヤンス！」
試合はイプシロンの勝利で終わった。終わったのならあとは学校を破壊するのみである。手に持ったボールを上にかかげ「やれ」と冷たい声で指示をだしたデザームの耳に「待て！！」と力強い声が届いた。
「まだ試合は終わっちゃいない！」
我らがキャプテン、円堂守である。
「俺たちが相手だ！」
強い意志を湛えた目でこちらをまっすぐ睨み付ける円堂にデザームは抑揚のない声で「お前たちが？フンッ、いいだろう」と返した。
一連のやり取りを聞いていた蒼龍は、さっきまで体に巻き付けていたブランケットをいつのまにか小脇に抱え、そこそこ大きい声で『あっ』と声をだした。
近くに居た吹雪と栗松だけでなく、少し離れた位置に居た瞳子や春奈たちまでもが驚いたように蒼龍の方を振り返ったが蒼龍は気にせず瞳子へ向き直り、
『瞳子監督、試合するなら私ベンチでいいですか？』
と聞いた。瞳子はさして驚きもせず「ええ、いいわよ」と言った。蒼龍から言われなくとも元からそのつもりだったのだろう。
「なんでですか監督！蒼龍がベンチって！」
「そうですよ！蒼龍もなんで自分からそんなこと言うんだよ！」
それに対して抗議の声を上げたのは風丸と塔子だった。他のメンバーも蒼龍の発言と瞳子が了承したことに驚くと同時に疑問を感じていた。
『なんでって、私はまだ入ったばかりで練習してないから皆と連携とれないだろ』
「蒼龍の言う通りだ」
「鬼道…お前まで…」
「蒼龍お前はまずこの試合を見て俺たちの動きを見ていてくれ、余裕があるならイプシロンの動きも見てほしい」
『そのつもりだ』
「でもキャプテン！目鏡さんも出れないのに蒼龍さんが抜けたら10人でやることになるッスよ！」
「なら10人で戦うまでだ！」
「じゅっ、10人で！？」
「このままあいつらの好きにはさせられないだろ！」
「それはそうでヤンスが…」
「11人目ならいます！」
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作者名：南極 | 作成日時：2019年11月29日 20時
