婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

16 ページ16

.








｢A様。これは相瀬でございますので、私共はここでさがらせて頂きます。
あそこに見える白い東屋にいらっしゃいますので、どうかご武運を｣


｢が、頑張ります｣





城に入ってからどこへ行くのも……、いや本当に。
寝ても醒めても。お風呂もトイレも。ずっと着いてきていた女中2人が頭を下げて見送った

頑張ります……なんて軽い意気込みではないけど
私の人生全てがかかっているのだ、このファーストコンタクトに


城にある大きな庭園




ここは城の中で唯一、自分の部屋以外で訪れたことのある場所だ

庭師が毎日毎日手入れしているからか、平民街では目にしたことない花が沢山ある



1番驚いたのは、上から水を垂らしてるモニュメント

オシャレで可愛くて好きだけど、あの石膏がいくらなのか、水を一日にどれほど浪費してるのか、とか考えていたら気が引けた





そんな庭園の真ん中に建っているのが真っ白な東屋


あそこには椅子とテーブルだけのちょっとしたスペースしかない
踏み入れたら最後逃げ場がないことを私は知っている




芝生を踏みつけながら大きく深呼吸をする

笑顔と愛嬌。


ここ数ヶ月をフル活用して、なんなら寝る暇も削られたし、スタイルをよくとかいってご飯も削られたりしたけど

何とか乗りきって今日まで来たんだ



私なら……大丈夫。



先生たちの最後まで不安な顔が頭にチラつくけど、大丈夫。たぶん……



東屋に足を踏み入れて、頭を下げた
全ての面を下に向けてはいけない。

スカートの裾を小さくつまんで、全ての柄が見えるように広げる。

片足をほんの少しひく。





完璧。




｢お初にお目にかかります。───A・アルデリーニと申します。｣





第一関門のカーテシーを無事終えることが出来て、安堵しながら顔を上げた


目の前にいるであろう私の未来の婚約者を見るために……。


息が詰まった。



｢……綺麗｣



私と対象な真っ白な髪の毛
日に当てられていない真っ白な肌
私を真っ直ぐ見ている玉露の瞳



後ろに見える花々が霞んでしまうほど綺麗だ
一度目に入れたら最後、外すのが惜しくてガッチリと視線が固定されてしまった




｢こんにちは、Aさん
噂通りの素敵な髪だ｣




にっこりと笑みを浮かべた彼は、見まごう事なき美しい顔立ちだった

動かないと、喋らないといけないのに、もっとその笑顔を見ていたくて思考が止まる




｢そんな見ないで。恥ずかしいです……｣



困ったように頬をかくまふまふ様

その仕草一つ一つ綺麗で、これが貴族の頂点に立つ王族の振る舞いなんだと見せつけられた

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す