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1,邂逅 ページ3




​───それは初めから仕組まれた底なしの沼(運命)




「いらっしゃいませ〜!」

 朝から眠たくて声もほとんど出したくないオレとは正反対にいつもいつも健気に笑顔で来店した客を明るい声で挨拶するのはオレの家の近くに最近出来た軽食屋の女店主の枢木A。
 マイキーが好きなたい焼きもどら焼きもあるから、最近出勤前に買うようになった、というのは建前で、彼女の笑顔が何となく頭に残ってオレは開店して早々にそこの常連になった。


「あ、!三途さん!おはようございます、日曜も仕事なんて大変ですね〜」


 今日もたい焼きと生どら焼きでいいですか、という問いに対してオレは頷き、お願いします、と返す。ありがとうございます、と笑顔でたい焼きを作り始めた。そうすれば、彼女の顔が変わり真剣な眼差しで調理を始める。
 手遅れなことに、もうオレは最初から彼女の虜で彼女ならオレにとっての甘美な存在なんじゃねえかと勘というより本能で期待していた。


「よし、えーっと生どら生どら…はい、どうぞ!」


 気を使って冷たい生どら焼きと焼きたてのたい焼きを別々の紙袋に入れてオレにそれを手渡す彼女はいつも通り冷たかった。これから夏にさしかかろうとしているにも関わらず、だ。
 この世には性別とは他に2つの性別が存在する。ケーキとフォーク、アイスとジュース、だ。どちらにも当てはまらないものがほとんどでごく稀にこれらの性別を持つ者が生まれる。そしてオレはフォークという性別を持っている。そのおかげで味覚障害を持っているオレは食い物は全て味がしない。
 彼女はきっとアイスとジュースか、その他と言うならば、彼女はきっとアイスという性別だと思った。それはきっと本人しか実際の所は分からねえけど。あんなに暖かいたい焼きなんぞを焼いていながら手が冷たいわけが無い。彼女はきっとアイスだ。

 それも、オレにとってはただの(ice)ではなく甘い味がするアイスクリームだった。


「また来ます」
「はい!お待ちしていますね!」


 いつか彼女を一口でいい、その甘さを堪能したい。



⥥→←アイスバース、花吐き病とは



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パチンカスヱ(プロフ) - 凛愛さん» ありがとう😌💕こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとう😌 (2021年12月30日 8時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 完結おめでとうございます!表現ひとつひとつが刺さるお話でした…!!たった一度の恋をこんなにも儚く美しく書ける文才に感嘆するばかりです。書いてくれてありがとう!!ココくんの新作も楽しみにしてます🥺🥺 (2021年12月26日 20時) (レス) @page17 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - 完結おめでとう!!泣きました…素敵なお話をありがとう…😭😭 (2021年12月26日 13時) (レス) @page17 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 桜峰瑠璃さん» 嬉しいです……!!!! 一緒に出頭しましょう🥰 (2021年12月2日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
桜峰瑠璃(プロフ) - ヤバい!!!全性癖にぶッ刺さる!()しゅき…興奮する!!!!!(通報案件) (2021年11月30日 17時) (レス) @page5 id: 643076eff9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月24日 6時

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