ウンディーネの泪

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いつものように月が昇るのを確認して部屋を出た。

自然の多い中庭が1番気に入って、毎晩来ている。

誰も居ないことを確認して、噴水の水に脚をつける

膝にも届かない水を蹴り上げながらゆっくり歩けば

水面に映る月が、満月を写していたのに気づいた。

そっと空を見上げる。


あぁ、今日はなんて良い夜なんだろう…

エデンにいた頃、満月の日には必ず

ユンギとミアと３人でお月見をしていた。

水辺で歌う私を、黙って見守るユンギと

その横で寒いと震えていたミア。

懐かしいな…今日は1人だけど

少しだけ…少しだけならバレないよね？

ゆっくり息を吸い込んで、そっと音を乗せた

水は宙で円を描き、Aと共に踊り始める。


「っ〜♪〜っ〜〜♪〜」

『…』

「〜〜〜♪っ〜っ」

その時、奥の茂みがガサッと揺れ動いた

『…っ』

「っ！？…誰？」

気まずそうに頭に葉をつけた男が顔を覗かせる。

こんな時間に見たことの無い人物への恐怖と

力を使っている所を見られた焦り。

もしジミンにでもバレたら、きっとこの生活も

全て無くなってしまう…それだけは避けなければ。

「…あなた、誰。
こんな時間にどうして、こんな所に」

『ごっ、ごめんなさい！脅かすつもりは無くて！
ただ、あまりに綺麗だったから…って！いや、

これはそういう事では無くてっ、その、歌声！
歌声がとても綺麗だから、聞き惚れちゃって！！』

「聞いてただけ…？」

『もももちろん！何にも見てないです！！』

その言葉に、ひとまずホッとする。

すると近づいて来たその人。

『それより、君。こんな時間に1人？
女の子1人で危ないじゃないかっ』

「…許可は貰っているから大丈夫」

『それでも危ないよ！夜中に人気の無い中庭でっ、
誰かに襲われたらどうするの？』

「こんな時間に、誰も来ないもの」

『え、現に僕が来てるじゃないか…』

「私を襲う気で居るの…？」

『っまさかそんな！！』

「この時間、人に会ったのは貴方しかいないわ」

『そ、そうなんだ…』

「…」

『…』


互いにどうすれば良いのか分からず、沈黙になる。


『あ〜…あ、君の名前は？
僕はジン、ここの料理人見習いなんだ』

「…私はA」

JN「Aちゃん、綺麗な名前だ！よろしくね」


下がった目尻、頭に付いた葉はそのままに

柔らかい笑顔で手を差し伸べたジン。

その瞬間Aの心にスッと温かい風が吹き抜けた

「っ…ええ、よろしく」

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