12 ページ12
翔の部屋に戻って。
二人で布団に包まる。
脚に脛毛が当たってチクチクする感触も。
ちょっと自分本位な攻め方も。
髪を掻きしだく指も。
かすれて響く低い声も。
懐かしくって、切なくって、愛しくって、また泣きそうになった。
でも、あんまり泣いたら本当に怪しんで心配するだろうから、我慢した。
翔の腕の中で、翔の寝息を聴きながら、夜が明けていくのをずっと眺めてた。
引き潮が引いていくように、夜が少しずつ遠ざかり始める。
濃い暗闇はちょっとずつちょっとずつ、新しい1日が混じり始める。
翔の両腕は私を抱え込んでいるのに、だんだんと温もりが薄くなり始める。
(戻るんだ。)
そう分かった。
2014年の私の意識が2004年の私の体に入ってる間。
2004年の私の意識は、2014年に居たんだろうか。
もしそうだったなら、私はどう思ったんだろう。
翔ともう一緒に居てはいない自分を見て。 想像以上の場所に居る翔を見て。
こんなのイヤだ！って思って、ここに戻ってくるのかな。
それとも、ほんの少しだけ「やっぱりな・・・・・」って思ったのかな。
そのどちらにしても。
そのどちらでもなく、他の思いであったとしても。
別れるその日まで、翔を悲しませないであげて。
翔と一緒に笑っていて。
たくさん手を繋いでいて。
入れ替わるであろう私へと、離れていく肉体の細胞に想いが染み込むよう、必死に念じ続ける。
そして、隣で寝ている翔を振り返る。
翔。
少しオトナになっちゃった私でこの時の翔にもう一回逢えたこと、よかったのかな。
大好きだった翔にもう一回逢えたこと、よかったのかな。
終わった恋なのに。
どうしてあの頃の翔に、こうやって出逢ったのだろう。
無理矢理作ったカサブタが剥がれていくような気がした。 あの時曲がり角を曲がったのは、私の意思なのに。
────あ・・・・もう意識が消える気がする。
全ての輪郭がボヤけてる。
最後に。
隣に眠る翔に伝えるように、唇を動かす。
翔に、また逢いたい。
・
・
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 293人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
羊羽(プロフ) - うさぎ丸さん» 初めまして☆こちらこそ、読んでいただいた上に嬉しくなる感想いただいちゃって感謝カンゲキ雨嵐です。楽しんでいただけたならこれ幸い、書いた者冥利に尽きます(○´艸｀)他のものも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2015年6月27日 9時) (
レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ丸 - 初めまして！櫻井担です♪素敵なお話、ありがとうございましたm(_ _)mこんな素敵な作品を読めて嬉しかったです♪作者名から羊羽さんの他のお話、拝見しに行きます(^o^)v (2015年6月26日 18時) (レス) id: af0ac92990 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ポヨリンさん» こちらこそ、嬉しい感想ありがとうございます〜〜！深謝☆ (2015年3月10日 11時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
ポヨリン(プロフ) - お疲れ様でした。素敵な作品をありがとうございますm(_ _)m (2015年3月8日 23時) (レス) id: faa9497605 (このIDを非表示/違反報告)
ポヨリン(プロフ) - 羊羽さん» ぜひ！来てください！今、更新真っ最中です。ぼちぼちしか更新していませんが一言いただけるとありがたき幸せ。 (2015年2月28日 11時) (レス) id: faa9497605 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：羊羽
| 作成日時：2015年2月10日 14時
