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「ん?どうかしました?」
「…いいえ、美味しそうに食べてもらえるのが嬉しくて」
「だって、本当に美味しいんですよ、Aさんのシチュー」
私の作ったなんて事のない普通のシチューをとても美味しそうに食べてくれる彼に、
なんで私なんかと付き合ってくれるんだろう
と、何回も何回も思うのである。
、
「Aさん、明日から少し連絡できそうにありません」
「探偵のお仕事ですか?」
「はい、少し遠くに行くことになりそうです」
「…分かりました。気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
普段はポアロで働いてることも多いが、
こうして探偵の仕事が入った時は急遽出ることもある。
その度に連絡は減るし、会えない期間が長い。
でも文句は言わない。
こんなステキな人が私の手料理を食べてくれること自体が奇跡なのだ。
会いたい、寂しい、もっと一緒にいて。
その言葉は吐き出されることなく私の心に常に蓄積される。
言えない。
大好きな透さんに見捨てられなくないから。
「遠くに行く前にAさんの手料理が食べれてよかった」
「…こんな普通の家庭料理で良ければいつでもお作りしますよ」
「ああ、それがいいんですよ。いつも食べたい。ほんとうに。」
透さんは玄関で、靴を履くとこちらを振り返る。
その顔はなんだかとても疲れて見えて
私の料理を食べにきてくれたのは嬉しいけど
早くお家に帰って休んでもらいたい、そう思った。
「ありがとうございます。じゃ…気をつけて」
「うん、おやすみなさい」
玄関で軽く触れるだけのキスをした。
それだけで恥ずかしくて少し俯く。
「来月…26歳の誕生日は一緒に過ごせるように頑張りますから」
「ありがとう…でもそんな無理しないでくださいね」
「僕がそうしたいんです」
「…ありがとう、ございます」
目頭が熱くなる。
ああ、好きだな…。
会えなくても、寂しくても、
こうして優しい言葉をかけてくれる彼を。
「それじゃ…行きますね」
「はい…おやすみなさい」
そしてパタンと、扉が閉まると、
社会人6年目の私の小さなアパートは、
すぐに人の暖かみを奪っていった。
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NANA(プロフ) - アオさん» アオさんありがとうございます!訂正してきます^ ^ (2018年5月4日 10時) (レス) id: 33232cc3d6 (このIDを非表示/違反報告)
NANA(プロフ) - 薔薇さん» 薔薇さん初めまして。楽しんでもらえて嬉しいです^ ^続きもよろしくお願いします^ ^ (2018年5月4日 10時) (レス) id: 33232cc3d6 (このIDを非表示/違反報告)
NANA(プロフ) - ちりさん» ちりさん初めまして。キュンキュンしてもらえて嬉しいです。更新頑張ります^ ^ (2018年5月4日 10時) (レス) id: 33232cc3d6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 安室さんに仕事は休みをとったのは、夜のうちに言っていましたよ? (2018年5月4日 9時) (レス) id: 95a693fe0b (このIDを非表示/違反報告)
薔薇 - とても素敵なお話で、更新を楽しみにしていました。執行人編、とても楽しみにしております。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: cb8b72a93d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NANA | 作成日時:2018年4月28日 16時