43 ページ43
.
俺の知ってる髪型じゃない。俺の知ってる笑顔じゃない。俺の知ってるメイクじゃない。だけど完全にAで、Aが喋って、Aが笑って。
「パクジフン」
誰のものでもなく、Aの声だ。俺を「ジフナ」て呼んで甘える声だし、俺を「ジフナ」て呼んで揶揄う声だし、俺を「ジフナ」て呼んで笑う声だ。
今日も眠そうに半眼なのは相変わらずだ。浅く笑った唇から覗く白い歯もそのまんまだ。
なのに全く違う様相の変化に頭がパニックだった。舌を噛んで意識を戻す。周りの目が痛い。視線が凄い。Aの笑顔が綺麗。ていうか全体的にAが綺麗。
「好きだよ、もっと悪いことしない?」
知ってる言葉だ。散々言われてきた言葉だ。何度も軽くあしらって、時には笑って「俺も」なんて返しちゃったりして。
クラスメイトが悲鳴をあげた。その音は何処か遠くで響く。いつもの癖のとおりに舌を軽く出して、噛んで、Aの目を見つめて、そんで、…次っていつもどうしてた?
「ここでイエスって言ったら、あんたのイメージ死んだも同然だけど」
手にキュッと力を込められる。柔くて、今日もひんやりした白魚の手だ。
上目遣いに弱いの知ってるだろ。俺、お前のその顔に弱いんだよ。
キラキラ眩しい好戦的な口元が好き。怠そうなのにでもギラギラしてる目が好き。けらけら軽快に笑い飛ばす性格が好き。
んで、このゆらゆら甘く強請るみたいな顔も好き。だって俺の特別感があって、俺を頼ってくれるって分かるし。でも、そうされると弱いから。
「死んでよ、そしたら私が生き返らせてあげるよ」
ここでイエスって頷いたら、俺の今まで築いてきたイメージなんてボロッボロ。だってあのソヌA。悪名高いビッチ。んで俺はみんなに好かれる優等生。
ここで手を握り返して頷いたら終わり。
それがどうした。知ってる、そんなのこいつを好きになってから。
ビクビク周り目ばっか気にしてた。みんなに優しく、八方美人。死んじまえ、そんな俺。だって、そんな男、こいつについて行ける筈がない。
一段と悲鳴が大きくなる。遠くの世界の音みたいで全部無視。知らねえ。俺には関係ない。
血の味がガリッと広がって、鉄臭い酸味に笑みが溢れた。痛みは二の次で、んべ、と舌を出してAにキスをする。痛み分け。まずは血の味を楽しんで、そしたら次は何をしようか。
舌を噛み切れんでもって死ね
.
50人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こー - いえいえ!わざわざありがとうございます(涙)楽しみにしてました!読ませていただきますね! (2020年5月25日 0時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» 遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。今日やっとお話あげたので、まだ気があれば是非読んで下さい。感想待ってます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
こー - お久しぶりです( ^_^ )投稿したお話って何日くらいしたら見れるんですかね?? (2020年5月20日 23時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» コメントとても嬉しいから大丈夫ですよ〜笑笑 ありがとうございます、地道に頑張ります。1日ほどお待ち下さい〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - springさん» 会社の同期で話進めてるので、幼なじみ設定である人を出そうと思います〜。リクエスト送って下さったのにすみません、幼なじみのお話はまた別の機会か、並行で書かせて頂こうと思います。次作も何卒よろしくお願いします〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:FIX | 作成日時:2020年4月8日 11時