探偵事務所ｰHit the floorｰ (ページ9)

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｢うん、だいじょぶそうね｣

人差し指につけたパルオキシメーターが96まで戻り、｢手の震えも落ち着いたし、よかった｣と香里奈が片付けを始める。

そー言えば、咳き込んでも酸素なんて吸入することなかったのに。

最近、夢を諦めたせいで心から弱り始めてたのかな。なんて振り返る。

大野さんと世間話をしていると、片付けを終えた香里奈さんがそう言う。

｢二宮くん、そろそろ病院に戻らなくていいの？｣

え、なんで、俺の名前を？制服に名前が刺繍されてる訳でもないし、なんで？

しかもなんで病院がでてくるわけ？何か事情でも知ってんの？

｢私、一応探偵よ？そんなびっくりしないで｣

俺の気持ちを汲み取ってか、はははと笑いながら答えた香里奈さん。

｢あと、私、前そこに勤めてたの。
名前分かった瞬間思い出したわ。嚢胞性線維症の患者さんでしょ？｣

淡々と喋る彼女に恐怖を覚え、咄嗟に荷物を回収して、走り去る。