PARACAGE 4th【ars】 (ページ33)

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138.だから。ページ33

「あ、それともモデルだから？」

ニノくんに言われて、あぁそうだった！って思う位ちょっと自分の中で咲くんが雅紀くんって事を忘れかけてた。

「言われてみれば、そこも大事だよね...あんな見目麗しいモデルさんに自分が釣り合うなんて思えない...！」
「今更？」
「身分弁えろって感じだ...平民がお殿様に想いを寄せてるようなもんだ...」
「どうしてそこ王子様じゃ無くて殿様なの」

ソーダを飲んで、ニノくんはやっぱり可笑しそう。

「まぁでも、そこは気にしなくっても良いんじゃない？多分、アイツそーゆーの気にしない。ってゆーか、相葉さんは『咲』として接して来る女を恋愛対象としては見ないよ」
「...そうなの？」
「うん」
「......」
「それに、Aはそこそこ可愛いから大丈夫よ。顔は普通だけど、お前は自分の雰囲気作りが上手い」
「......褒められてんのかディスられてんのか、全然分かんない」

ジトーっとニノくんを見ると「その顔はブサイク」って言われて、今度は私が彼の頭にチョップ。
いてぇ！なんて言いながら、俯いて頭を両手でスリスリしてる。

「ねぇ...」
「なによ」
「『咲』として接して来る人を恋愛対象に見ないっていうのは...」
「うん」
「......」

私が言い淀んだら、ニノくんが顔を上げて首を傾げた。

「その名前を呼ばれると思い出すから...？」

あきらかに、彼の表情が変わった。
私から目を逸らして、何かを考えてるのか唇をキュっと噛んでもう一度私を見る。

「相葉さんから何か聞いたの？」
「ずーっと前に、まだここに越して来たばっかりの時にどうして芸名なのか聞いて...その理由を教えてくれて」
「うん」
「それで、こないだ二人で飲みに行った時に...その...『咲』って漢字をあててくれた人を忘れられないって...」
「あぁぁ...」

ニノくんが、どこか痛いのかって位に顔を顰めた。
そして、すぐにハっとした顔で私を見た。

「最初に名前のコト訊いたのって、お前が来たばっかりの頃って言った？」
「うん、そうだけど...」
「だからか...」
「え、何が？」
「アイツ、女遊びしばらく落ち着いてたのよ。なのにまた始まったから何があったんだろうって思ってたんだけど」

何だか、胸の奥が気持ち悪い。
私が雅紀くんの記憶を引き出してしまったのかもしれないのかと思ったら、吐き気すらする。

ニノくんが飲み干したソーダ。
私の目の前にある同じ物は、アイスが融けきってしまって全然美味しそうに見えなかった。