PARACAGE 4th【ars】 (ページ23)

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128.装う。ページ23

ふわふわ歩く雅紀くんは電車に乗ると、すぐに寝てしまった。
ただホッとしたのも束の間、漫画みたいに彼の頭が肩に乗ったから私はピクリとも動けない。

でも、雅紀くんの髪が頬に触れるのはやっぱり嬉しくて幸せで。
だけど、バルで聞いた話や駅前での会話を思い出すと落ち込む。
絶好調に、情緒不安定だ。

最寄駅に着くちょっと前から雅紀くんを起こして、まだボーっとしてる彼を引きずるようにして一緒に電車を降りた。
また肩を抱かれて(乗られて？)私はその腰を支えて。

「ちゃんと歩いてねー」
「歩いてるってばぁ」
「自力で歩いて欲しい」
「自力だよ？」
「どこが！重い！」

電車の中で一人センチメンタルになってたなんて少しも思わせない位に、サバサバ女子を装ってみせる。
本当はウジウジ女子なのに。

雅紀くんは楽しそうに小さく鼻唄を歌う。
何の歌か分かったから私も一緒に歌うと、彼の歌声に笑い声が混ざった。
鼻に掛かったような、少し掠れた声。

写真を見てるだけの時は知らなかったこの声を、今の私はどうしようもなく好きになってる。

「ただいま帰りましたー...」
「ただーいまーぁ！」

テラハウスに着いた時には、私はもう心身ともにグッタリ。

「おかえりな...え？雅紀？」

玄関に出て来てくれた翔さんが、私の肩を抱いて体重を預けてる雅紀くんを見て目を真ん丸にした。

「Aちゃんと飲んでたの！フフッ」
「いやいや...どんだけ飲んだんだよ」
「だいじょぶ！ちゃんと記憶もあるし、帰って来たでしょぉ？」
「お前、呂律が...」

翔さんが物凄く心配そうな顔で私を見たから、ハハッと笑って応えると彼もハハッと困ったように笑った。
きっと、私もそんな顔だったんだろうなって感じの表情。

「ただいまー...お、ビックリした...」

その時、帰って来た潤くんが玄関に居る私と雅紀くんを見て一歩下がった。

「また雅紀が知らない姉ちゃん連れて来たのかと思った」
「こら、潤」

すぐに翔さんが窘めると、潤くんは「ご苦労さーん」と私の肩をポンと叩いてさっさと家の中に入って行く。

「ほら、雅紀こっちおいで」
「えーやだー」
「文句言うな！」

三和土に下りて来た翔さんが、私の肩から雅紀くんを引き取ってくれた。
肩が軽くなって、思わず大きく深呼吸。

ポイっと脱ぎ散らかされてる雅紀くんの靴を揃えて顔を上げると、いつの間にか玄関でしゃがんでたニノくんが「なかなか壮絶ね」と、笑った。