PARACAGE 4th【ars】 (ページ3)

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108.横並び。ページ3

夜も深まり、それぞれお風呂に入ったり、部屋に戻ったり。

私も部屋に戻り、洗った髪を乾かす。
本当は洗面所で乾かしたいけど、私がずーっとそこに居ると誰もお風呂に入れなくなっちゃうから部屋で乾かす事にした。

「...ちょっと寒いな」

最近蒸し暑くて窓を開けたまま寝てたけど、今日はちょっと肌寒い。

よいしょ、と立ち上がり開けてた窓を閉めようと窓辺に行くと、白い煙が流れて来た。

煙草？
誰かまだ下に居る？

窓からちょっと身を乗り出して一階を見たけど真っ暗。
部屋から漏れ出した灯りは無いから、もう縁側には誰も居ないってコトだ。

「Aちゃん、落ちちゃうよ？」
「えっ！？うわっ！！」
「わわわっ！危ない！」

突然声を掛けられ驚き、桟に置いてた手が滑った。
本当に落ちかけてるし。危ない...もう身を乗り出すのはやめよう...。

「大丈夫？」
「うん...ビックリしたけど...」

声のする方を見ると、隣の部屋の窓に両肘をついて顔を出した雅紀くんがこっちを見てた。
灰皿代わりらしいビールの空き缶を片手に、煙草を指に挟んでる。

「Aちゃん、まだ寝ないの？」
「もう寝ようと思ったんだけど、ちょっと寒かったから窓閉めようと思って...」
「そしたら俺に声掛けられちゃったんだ」
「フフッ、落とされかけました」
「アハッ！人聞き悪いなー！」

本当はもう、堕ちてるんですけどね。
なんて、上手くも面白くも無いコト考えちゃってウンザリ。

「雅紀くんはまだ寝ないんですか？」
「んー...ちょっと眠れなくて」

唇に煙草を挟み、スゥ...っと息を吸い込む。
その横顔から、吐き出された紫煙が夜空へ昇って行く。

「だから、さっきまで一人飲み」

彼の持ってるビールの缶には『カズ』って書いてある。

「あ、怒られちゃいますよ？」
「怒られるかなー？怒られたら謝ればいっか！」

雅紀くんはカズ印の缶にコンコンと灰を落として、煙草を唇に挟んだ。
笑ってた口角が、下がる。

「雅紀くん」
「ん？」
「...雅紀くんは、どうしてここに住んでるんですか？」

ずっと気になってた。

シェアハウスって、一人暮らしに比べると自由度は低い気がする。
言っても共同生活だから。

...昨日みたいに翔さんから注意される事だってあるし。

「どうしてAちゃんはそう思った？」
「え...」
「一人の方が好き勝手にやりたい放題できるのに、って？」
「......」

フッ、って小さく笑って彼はまだ長い煙草を缶の中に突っ込んだ。