PARACAGE 4th【ars】 (ページ17)

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122.あの人とこの人。ページ17

挨拶だけ！って言うアカリと一緒に、従業員口から出て店の前に回った。
そこには、壁にもたれてスマホを見てる雅紀くん。
耳に繋がる、赤いコード。

まだ私達には気付いてない。

「うっわ...本物...」

アカリが私の後ろに隠れてコソーっと顔を出した。

「やっぱり、挨拶やめとく！」
「えっ？」
「Aと咲くんがどんな関係なのかちゃんと聞いてからにする」
「.....」
「とか言って、ちょっと緊張で吐きそうだからなんだけどね！」

アハッ、と笑ったアカリが「じゃあ、明日絶対だからね！」と私を指差しながら言う。

「うん、明日ね」
「ほら、咲くん待ってるよー？楽しんで来てね！」
「ありがと...」

アカリはそのまま、帰って行った。
本当は私に隠し事があったこと、気分良いはずが無いのに。
アカリだって咲くんのファンなのに。
せめて明日は、私の奢りにさせて貰おう。

小さく深呼吸。
間違えてラマーズ法をしてしまってる自分にも気付いてない位に、緊張してた。

「お待たせしました…」

そーっと近付いたけど、音楽を聴いてるらしい雅紀くんはスマホに目を落としたまんま。
仕方無いから、人差し指で彼の肩をツンツンとつついた。

「あ、お疲れ様！」

雅紀くんがイヤホンを外しながら笑う。
あぁもう、いちいち心臓に悪い。
いちいち格好良いとか、どうなってんの。

「行こっか！俺、めっちゃ腹ペコでさー」
「私もお腹減りました！」
「楽しみだねー、何食べよっかなー！」

楽しみなのは肉バル行くこと！
相手は私じゃなくても良いんだから！

自分で自分に言い聞かせながら、雅紀くんの隣を歩く。

「タンあるかなー」
「雅紀くん、タン好きなの？」
「肉なら何でも好きだけどね。Aちゃんは？」
「私はホルモンが好きかな」
「お、渋いね！ホルモン、メニューにあるかなー」

そんな話をしながら街を歩いてると、ファッションビルの壁の大きな広告看板が目に入った。

ヒロシ君のとこのブランド広告。
もちろん、モデルは咲くん。
ソファに寝そべってる姿を上から写されてる。
乱れた髪が色っぽい。

素敵...。

そう思ったと同時に、足が竦んだように止まった。
私、あの人と一緒に居るの...？

雅紀くんは「どした？」って周りを見渡し、自分の広告で視線を止めた。
そして、その視線を私に向ける。

「行こ」

目の前まで歩いて来て

「あれは咲。俺は、雅紀でしょ？」

私の手を取る。

手を繋ぎ、大きな咲くんの横を雅紀くんと通り過ぎる。