PARACAGE 3rd【ars】 (ページ33)

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103.仕方無い。ページ33

私はすぐに首を横に振った。

「そんなルール、作らなくって大丈夫です」

私の答えを、彼は何も言わずに聞いてくれる。

「あ...大丈夫って言ったら、ニノくんに揚げ足取られますね！」
「アハッ、アイツはねぇ、そーゆートコありますからねぇ」
「フフッ。でもあの、本当に。そんなルール、作らないでください」
「良いんですか？」
「私がこの家に加わって、ただでさえ女だしみんな気を使ってくれてる部分もあると思うんです」

きっと、私が来るまではお風呂上りとかもっとラフだったんじゃないかな？って自分の兄を思い出して思う。
洗濯物も、潤くんは下着だけ自分の部屋で干してるって事をこないだニノくんが教えてくれた。
「オレは気にしないんだけど潤くんは紳士だからねー」なんて笑って。

なのに、これ以上は...

手の中のマグカップをジっと見る。
雅紀くんと交換したマグ。

今でも、見る度に嬉しくなる、大切なマグ。

「男の中で暮らさなきゃならないAさんの方が、大変でしょう」
「ううん、楽しいです」
「本当に？」
「楽しいです。家に帰ったら誰かが居て、一緒に時間を過ごして...楽しくない訳が無いです！」

私が笑うと

「あの部屋に越して来たのが、Aさんで良かった」

翔さんも、アハっと笑った。
彼の優しい笑顔は、簡単に女の子が落ちて行くだろうな...と思いながら私もドキっとする。
もうこれは仕方の無い事なんだ。開き直り。

「本気で無理になったら、遠慮無く言って下さいね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、僕はそろそろ行きます」

翔さんは新聞を畳み、ダイニングの上に置いた。
これを、この後から起きて来る潤くんとニノくんが回し読みする。
雅紀くんは...読んでるの見た事無い。

何となく玄関まで出て翔さんをお見送り。

「いつも誰にも見送られずに出て行くから新鮮ですね。ちょっと照れ臭い」

可愛いお顔にドキッ。
これは仕方無い事なんだ。だって、翔さんが抜群の女ウケ能力を持ってるんだから。開き直り。

「いってらっしゃい！」
「はい。行って来ます」

ゆっくり丁寧にそう言って、彼は出て行った。

出勤までにまだまだ時間がある私は、ダイニングに戻って残ってるコーヒーを飲む。
やっぱり苦い。

でも、マグを見ると心は甘くなって、でもすぐにコーヒーよりも苦くなって...。

「朝から辛気臭い顔しないでくれます？」

溜息を吐いてると、突然ニノくんに顔を覗き込まれた。