PARACAGE 3rd【ars】 (ページ31)

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101.狼と七匹の子ヤギ。ページ31

それは普段、見ないような表情で

何だかボンヤリと、智くんってこんなに格好良かったんだ...なんて思ってて

もしかして私本当は寝てて、これは夢かな？とか
寝惚けてるのかな？とか

でも、私の頬をツーっとなぞった彼の指にこれは現実だと気付く。

「一緒に寝る？」

緩く笑った智くんの指が、私の前髪を梳いた。

「眠れないなら、添い寝してあげよっか」
「.....え」
「絵本読んであげても良いし、子守唄歌ってあげても良いよ？」
「.....あの...」
「抱き枕になってあげても良いけど、どれが良い？」

スルスルと髪を撫でられてると気持ち良くてこのまま眠れそうなのに、これ、寝れるような状況じゃない。

「...だっ...大丈夫、寝れる...！」
「ふふっ、カタコトになってるよ？」
「.....一人で寝れます...」

ズルズルと布団を引き上げて顔を隠すと、智くんはやっぱり布団越しに優しくポンポン。

「ねぇ、Aちゃん」
「...はい」
「『狼と七匹の子ヤギ』って童話、知ってる？」
「...あー...知ってるけど、どんな話だっけ...」

子供の頃に読んだ絵本を思い出す。
確か、お留守番をしてた七匹の子ヤギが狼に食べられちゃうんだったかな...

またモゾモゾと布団から顔を出す。
智くんはさっきまでと同じように、ベッドの淵に座ってる。

「七匹の子ヤギが狼に食べられて...」
「ううん、食べられたのは六匹」
「あれ？」
「末っ子だけ、食べられなかったんだよ」
「...そうだ！時計の中に隠れてた子！」

それぞれ色んな所に隠れてたけどみんな狼に見付かって食べられちゃって、時計の中に隠れてた末っ子だけが助かるんだ。
それで、帰って来た母親ヤギが末っ子を見付けて...それで...

「あの後、狼どうなったか覚えてる？」
「...母親ヤギにお腹を切り裂かれた！」

外で寝てた狼の大きなお腹が動いてるのを見た母親が、まだ子供たち生きてる！って、お腹を開いて子ヤギ達を助けたんだ。

「ふふっ。しかも代わりに石をお腹に詰められて」
「きついお仕置きですよね」
「その上、狼は泉に落ちちゃってねぇ」

智くんが、フッて笑った。

「どんな話でも、狼って最後にバチが当たるよね」
「フフッ、うん」
「危なかったぁ」
「え？」

立ち上がり

「おれ今、狼なっちゃいそうだった」

そう言った彼が

「バチ当たんないよーに、ソファで寝るねー」

って、ふわふわとドアへと向かう。

「智く...」
「おやすみ」

優しく微笑んだ彼が、部屋を出た。