PARACAGE 3rd【ars】 (ページ30)

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100.BED。ページ30

智くんは、私が寝やすいようになのか机に向かって仕事を始めた。
水彩画を描く背中を見ながら、私はベッドに腰掛けた。
ニゴがベッドの端で丸まってる事にやっと気付いて、そっと撫でる。

「智くん...」
「んー？」

振り返らず、返事だけが帰って来た。

「ごめんなさい」
「何で謝るの？」

クルンと振り返った智くんは、笑わずに「謝んなくって良い」って言う。

「同じだよ」
「え？」
「相葉ちゃんに襲われたニノが暫くみんなの部屋を渡り歩いてた時と同じ。だから、気にしないで」
「......」
「もし眠くなっても、おれソファで寝るから大丈夫」

そうだ！
そうだよ！
私がそうすれば良いんじゃないか！
プチパニックでそんなコトすら考えられなかった...。

「智くん！私がリビングで寝る！」

そう言って立ち上がると、智くんも立ち上がった。
そして、両肩に手を乗せられベッドに座らされる。

「女の子をあんな所で寝かせられる訳ないでしょ」
「でも...」
「狼の群れの中に子ヤギさん放り込むようなモンだよ」
「......」
「ってのは、冗談だけど」
「ですよね」

ここの住民が狼だとは思えない。

翔さんは天然にたらし要素があるけどそれはこっちが勝手にドキっとするだけの事であって、彼自身は襲って来るような人じゃないし。
潤くんは完璧すぎて、私のような下々の者に興味を持つようには思えないし。
ニノくんは私をきっと男友達か、もしくはお母ちゃん的に見てる気がする。

雅紀くんは......

ハァ、と大きな溜息が出て慌てて口を押さえたら智くんに笑われた。

「もう寝なきゃ、朝早いでしょ？」
「...うん」
「はい、布団に入って」

促されるまま、布団に足を突っ込む。

「はい、寝転がって」

言われるまま、コロンと寝転がる。

「はい、おやすみ」

身体に布団をかけてくれた智くんが、子供にするみたいに布団越しにポンポンして机に戻って行った。

ダウニーの香りの布団。
でもやっぱり智くんの匂いもする。

目を閉じる。
画用紙を筆が走る音、筆を水に浸ける音、智くんの咳払い、小さな独り言。

やっぱりなかなか眠れなくて、寝返りを繰り返す。

もう何分、コロコロと寝返りを繰り返してるんだろう。
いっその事、もう寝ずに仕事行こうかな...。

そんな事を考えてた時

「Aちゃん」

ベッドがギシっと音を立てて沈む。

「眠れない？」

目を開けると、ベッドの淵に智くんが座って私を見下ろしていた。