PARACAGE 3rd【ars】 (ページ26)

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96.内緒話。ページ26

「雅紀も分かってると思います」

翔さんが微笑んだまま、話す。

「ただ、アイツはちょっと弱いから...」
「弱い...？」
「まぁ、人間誰しも弱いものなんですけど」

そう言って翔さんは立ち上がり「僕はそろそろ寝ますね！」と、使ったコップをキッチンに持って行った。

「ただいまー」

玄関からは、最後に家に帰って来た潤くんの声。
今日も疲れてそう。

そんな彼の開口一発目が

「なぁ、玄関にある派手なパンプスってAの？全然似合わないと思うんだけど」

だったもんで、ニノくんは爆笑してるしキッチンから出て来た翔さんは「潤...」って眉を下げちゃってる。
何故か智くんは「よしよし」って頭を撫でてくれた。

「あれ、相葉さんが連れ込んでる女の靴よ」
「あ、そうなの？どうりで。絶対Aに似合わないもん、あんな『良い女風』な靴」

更に智くんが「よしよーし」ってナデナデしてくれてる。

「潤くん、それは私が良い女じゃないってコトですよね...」
「はぁ？誰が『良い女』って言った？『良い女風』つったろ」
「...何が違うの？」
「『良い女風』は所詮『良い女風』でしか無いってコト。結局、本物にはなれないねってコトだよ」
「よく分かんない...」

「よしよーしよーし」って、智くんはもう若干ムツゴロウさん的に私を撫でてる。

「あー...どうでも良いけど腹減ったから、何か食うわ」

潤くんはリビングのソファにスーツのジャケットと解いたネクタイを放り投げて、キッチンに入って行った。
ニノくんは、相変わらずスマホゲームをしながらリビングに移動して縁側でゴロンと寝転がる。
ニゴも一緒に寝転がる。
翔さんは、部屋に戻った。

「Aちゃん」

やっと私を撫でるのをやめた智くんが、少し真剣な顔をする。

「本当に大丈夫？」
「え...？」
「何が大丈夫だとか、何がしんどいだとか...具体的な事は別に言わなくっても良いよ」
「......」
「言いたくなったら、言ってくれたら良いし。話は聞くって言ったでしょ？」
「...智くん...」

キッチンでは潤くんが何かを炒めてる。

「おれの部屋、Aちゃんの部屋よりは相葉ちゃんの部屋から遠いんだよね」
「...え？」
「遠いって言っても、同じ屋根の下なんだけど」
「......」
「逃げたくなったら、おれんトコおいで」

智くんは、静かに、内緒話をするように、言った。

「おれんトコに逃げておいで」

優しい、小さな声で。