PARACAGE 3rd【ars】 (ページ25)

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95.大丈夫。ページ25

「おい、雅紀」

ダイニングを出て行こうとした雅紀くんを、翔さんが珍しく厳しい声で呼び止めた。

「なぁに、翔ちゃん」
「もう少し生活態度を改めたらどうだ？」
「生活態度？何それ」

雅紀くんが、ちょっとムっとした顔をする。
智くんは心配そうに二人を見てて、ニノくんは我関せずでスマホゲームしてる。

「最近の雅紀は、目に余る」
「何が」
「自分でも分かってるだろ？分からない訳が無い。お前は馬鹿じゃないはずだ」

笑顔を剥ぎ落とした雅紀くんが、小さくフンっと息を吐いた。

「欲望に正直なだけでしょ」

「何が悪い？」と、彼は翔さんを睨む。

「今までだって、俺は同じような事をしてたはずだよ？その時は怒んなかったし、連れ込み禁止にだってしなかったじゃん。何で今更」
「そうだな、禁止事項にしとくべきだったと今は反省してるよ」
「......」
「この家にはAさんも居るって事を忘れるんじゃない」

翔さんが言うと、雅紀くんがゆっくりと私を見た。

「女性にとって、こういう場面は決して気持ちの良いものでは無いんじゃない？」
「......」
「遊ぶなと言ってる訳じゃ無い。ただ、ちょっと周りの事を考えて行動しろという話だ」

雅紀くんの視線が床に落ちて、智くんはやっぱり心配そうにしてる。
その空気に耐えられなくなった私は、気付くと立ち上がってしまってた。

「あのっ...大丈夫です！私の事なんかお構いなく！翔さん、お気遣いありがとうございます！」
「Aさん、でも」
「雅紀くんも、気にしないで下さい。元々この家では普通だったコトなんですよね！だったら、私が来たからって...うん、大丈夫ですから！」

アハッ、と乾いた嘘っぽい笑いが出てしまって慌てて椅子に座り直した。

嘘っぽいってゆーか...嘘なんだけど...

「『大丈夫』って言う奴の八割は大丈夫じゃないよね」
「こらこら、ニノ！」

ニノくんを智くんが咎めてる。
雅紀くんの視線がまた私に向いた。

「Aちゃん」
「あ...私は全然大丈夫！」

言ってすぐさっきのニノくんの言葉を思い出し彼を見ると、やっぱり「あーあ」って顔してる。

「今日だけ許して貰えるかな。あの子、家まで帰る電車がもう無くって」
「だいじょ...えっと、気にしないで下さい！」

少し笑った雅紀くんが私の頭に手を置き、ダイニングから出て行った。

何だか居心地悪くて「本当に大丈夫なのにー」って笑うと、翔さんが優しく微笑んでくれた。