PARACAGE 3rd【ars】 (ページ2)

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72.モーニングコーヒー。ページ2

何とか力の入った手で三つのマグを取り出す。
雅紀くんと交換したマグに、また胸がギシギシ。

「アイツ結構、頻繁にオンナ連れ込むんだよ」
「......」
「だからもしかしたら鉢合わせするかもしんないし、それだけ一応頭に入れといて？」
「......」
「知らなかったらビックリするでしょ、家に知らない姉ちゃん居たら」
「...ビックリしました...」

潤くんが「え？」って言ったのと、トースターがチンと鳴ったのが同時だった。

「まさか」
「...まさかです」
「鉢合わせ」
「...しました」

マジかー！って笑ってる潤くんの声を聴きながら、マグにコーヒーを注ぐ。

「ごめんごめん！やっぱ言っとくべきだったな！」
「......」
「最近は全然だったから忘れてた...って、そう言えば久々だな。連れ込み」

お皿にトーストを乗せながら、潤くんが呟いた。

キッチンから出てダイニングテーブルに朝食を並べてると、リビングで新聞を読んでた翔さんがこっちに来た。

「ありがとうございます」
「いえいえ、トースト作ってくれたのは潤くんです」
「Aさんだって、コーヒー淹れてくれたじゃないですか」

ニッコリ微笑まれて、アハーって笑ってしまう。
ガッサガサになってる心を潤してもらえそうな笑顔に、何だか泣きそうになる。

三人で食卓を囲んでると、誰か二階から階段を下りて来た音。

ダイニングのドアを開けて入って来たのは

「おはよ！あ、翔ちゃんも居るー」

雅紀くんだった。

いつも通り、寝癖で髪がモサモサしてる。
いつも通り、ちょっと目が腫れぼったい。
いつも通り、少しだけ声が掠れてる。

いつも通りの、寝起きの雅紀くん。

首回りが大きく開いてるゆったりしたTシャツから鎖骨が見えて、目を逸らしてしまう。

彼はそのままキッチンに入って行って、暫くしてから出て来た手には二つのマグカップを持っていた。
一つはお客様用の。一つは、私と交換したの。

「あれ？二人分？」

何も知らない翔さんが訊くと、雅紀くんは「モーニングコーヒー♪飲もうよー♪」と某女性アイドルのデビュー曲を楽しそうに口づさんだ。

「例の癖。連れ込み」

潤くんが言うと、翔さんが眉間に緩く皺を寄せて溜息。

「雅紀」
「なぁに、潤ちゃん」
「首に吸い付かれた跡あんぞ」
「え！うっそ！現場で怒られるから付けないでって言ったんだけどな...」
「嘘だよ、バーカ」
「うわ！意地悪ー」

雅紀くんが、ケラっと笑った。