PARACAGE 2nd【ars】 (ページ21)

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56.由来。ページ21

「そしたら、それを知った社長が『モデルをしてる自分に名前をつけろ』って」

よいしょ、って上半身を起こした雅紀くんが「雅紀は、そのモデルを演じろって言われたの」って私を見た。

「でもあんまりかけ離れた名前にしちゃうと、普通に呼ばれた時も俺は反応出来なさそうだからって名前からもじって『サキ』って決めて貰って」
「雅紀くんが考えたんじゃなくって？」
「うん。それに本当は『SAKI』ってローマ字表記になるはずだったんだけど、漢字になったのも自分では決めてないの」
「それも社長さんが？」
「ううん」

雅紀くんがテーブルの上で組んでる指を、小さくパキっと鳴らす。

「本格的にメンストデビューするってなった時に前の会社の友達が、あ、その時ニノちゃんも居たんだけど壮行会みたいなのしてくれて」
「へぇ！」
「俺、サキって芸名になるんだーって話をしたら『それだったら漢字の方が良くない？』って言われて」

その人はデザイナーさんなんだけどね、ってもう一度指をパキッ。

「俺のバカみたいな明るさは荒野にでも花を咲かせそうだから、って。フフッ、何か褒められてるのか貶されてるのか分かんないんだけど」
「フフッ、素敵な由来です」
「ホント？素敵だとしたら、名前負けしてない？」
「ううん、ちっとも。ピッタリの名前だと思います」

それに一瞬、女性名なのかな？と思うこの名前は雅紀くんの不思議な色香にもとっても似合ってる。

「しかもね、俺知らなかったんだけど『咲』って『笑う』って意味もあるらしくて」
「そうなんですか？私も知らなかった」
「これから辛い事も多いと思うけど笑ってなさい、って言われた」

そう言って雅紀くんは、ニーっと笑った。

「ねぇ、Aちゃん仕事大丈夫？」
「あ！そろそろ用意しなきゃ」

残ってたワッフルを口に入れて、コーヒーで流し込む。
間接キスはしてない、大丈夫。

雅紀くんはリビングに移動して、テレビをつけた。
朝のワイドショーが流れてる。

私はメイクと着替えの為に部屋に戻ろうと階段を上がってたら、青いドアから智くんとその腕に抱かれたニゴが出て来た。

「おはようございます」
「おはよ」

ニゴの頭を撫でて「おはよー、ニゴ」って挨拶すると「おはようにゃ」って智くんが腹話術みたいに返してくれる。

「昨日も遅くまでお仕事してたんですか？」
「夜中の方がはかどるんだよねぇ」

夜中に描かれてる智くんの絵本の中に出て来る夜空の色は、とても綺麗だ。