PARACAGE【ars】 (ページ10)

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10.ルール。ページ10

どんな絵本を描いてるのか？とか、そう言えばパタンナーってどこのブランドの？とか、私の働いてる雑貨屋さんはどこだとか、そんな話をしてたら縁側の外が暗くなって来た。

「そろそろ夕飯だなー...」
「あ、ご飯ってどういうルールなんですか？」
「んー、基本は個人で勝手に作ったり買ったりして食べる。一人暮らしと同じね？」

うんうん、と頷きながらニノくんの話を聞く。

「でも今みたいに何人か揃ってたりしたら、誰かが全員分作ったり。お金出し合って出前取ったり」
「なるほど」
「今日はどうしよっか。多分、もうすぐ翔ちゃんも帰って来るし...」
「...あ！私、お蕎麦貰ったんです！お蕎麦、嫌いですか？」

「好き」と、ニノくんと智くんの声が揃った。

「じゃあ、私が作ります！お出汁を多めに作っておけば、後から帰って来られた方にも食べて貰えるし...」
「お！ありがたい！まだ帰って来てない二人も蕎麦大好きだから」

何だかホっとして、私は部屋に戻ってゲンさんに貰ったお蕎麦を持ってキッチンへ向かった。

「失礼しまーす...」

自分ちなんだと思ってもまだ遠慮はある。
戸棚や冷蔵庫を開ける時に、いちいち「失礼します」と言ってしまってる。

「ただいまー」

お出汁を作ってると玄関から声がして、リビングの二人が「おかえりー」って応えてる。
キッチンから顔を出すと、部屋に入って来た翔さんが「ただいま戻りました」って微笑む。

「あ、おかえりなさい！お疲れ様でした」
「良い匂いですね」
「お蕎麦を作ってるんです」
「蕎麦ですか！」
「皆さんの分もあるんで、翔さんも良かったら...」
「もちろん頂きます！わぁ、嬉しいなぁ」

アハー、って笑った翔さんが「僕も着替えて来ますね」と袈裟を翻して部屋を出て行った。

出来上がったお蕎麦を私がダイニングに運んで、ニノくんがそれぞれの席にお茶を並べて。
智くんはニゴにご飯をあげてると、スウェット姿になった翔さんが戻って来た。

「うわ、美味しそう！」
「お口に合えば良いんですけど...」
「匂いはもう美味しいですよ！」

席は特に決まってないと言われ、ニノくんの隣で智くんと向かい合わせになる席が空いてたからそこに座る。

一人暮らしだといつも一人でご飯だったから、みんながウマイウマイって食べてくれるのが嬉しくてニヤニヤしそうになる。
ニヤニヤ押し殺してお蕎麦を啜ってると

「ただいまー...疲れた...」

玄関から、知らない声が聴こえた。