PARACAGE【ars】 (ページ28)

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28.お揃いとか。ページ28

「す...すごい、ね...」

どうにかこうにか、声を出す。
だって、本当に嬉しいから。
彼の新しいお仕事は、ファンとしてすっごく嬉しい。

でも、今の私は『咲くん』じゃなくて『雅紀くん』を知ってしまったから、どうも前までと同じテンションになるのが申し訳無くなる。
一体、誰に対して申し訳ないのかすら全然分からないけど。
ただただ、申し訳ない。土下座な気分。

「まだ内緒ね？」
「うん、言わない...」

アカリが立ち上がりながら「でもさぁ、私としては咲くんにドラマとか出て欲しいの」って呟いた。

私が「咲くん！咲くん！」って言い過ぎたのが影響して、やんわり咲ファンになってきたアカリはよくこの台詞を言う。

「だってさ、他のメンストモデルってどんどんTVに出てるのに咲くんは出ないでしょ？」
「まぁ...そうだね」
「絶対にテレビ映りだって良いと思うの！わかんないけど！」
「どっちよ」

2人でアハハーと笑い合う。

「あれだけ表紙やってたりしたら、オファーとかありそうなのにね」
「確かに」
「何で出ないんだろ。シャイなのかなー？」

シャイ.....って感じは全然しなかったよ、全く無かったよ...と心の中で独り言。

その日の勤務中は、雅紀くんが使ってたマグと同じ物を何度も手に取った。

本当はこれを買って帰りたい！
咲くんとお揃いとか、ファンなら絶対にやりたい事！

でも、そのマグはそっと棚に戻す。

結局、私が自分の為に選んだのは入荷した時から可愛いなーと思ってた新作のマグ。
それと、鴬色のベッドカバー。

...別に、雅紀くんのドアが鴬色だからじゃなくて！
前の部屋の壁が鴬色だったから！
その思い出と共に新生活を！って事で！

その2点をお買い上げして、私は18時15分には店を出ていた。
アカリに「ご飯行こー」って言われたけど、ごめんだけどまた今度って約束。

うちに着くと、玄関に灯りがついてる。
人がいるから当たり前なんだけど。
ちょっと、ムズムズする。

「ただいま帰りましたー...」

ガラガラと引き戸を開けると、ニゴがテテテと走って来たから「ただいまー」と顎の下を撫でてあげる。
ゴロゴロ言ってる。可愛い。

「おかえり、Aちゃん」

ヒョコッと智くんが出て来てニゴを抱き上げた。

何となく、玄関に並ぶ靴を見てしまう。
今、家にいるのは誰...？

「相葉ちゃんがまだなんだけど、Aちゃん帰ってきたからもうご飯にするってー」

私が頭の中で呟いた疑問に、智くんが答えてくれた。