PARACAGE【ars】 (ページ3)

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3.某ハウス。ページ3

「え、ここ？」

住所...あってる。

シェアハウスってだけで勝手に洋風のマンションなんかを想像してた。

恐る恐る、門扉まで近付いてみる。
そこに小さなプレート。

「テラ...ス...」

そこには、間違い無く『テラスハウス』と描いてあった。

「...」

オシャレな家とオシャレな車を用意された男女が、テイラー・スウィフトに乗せてオシャレな恋愛する感じ？

思わず後ずさると、背中がドンっと誰かにぶつかった。

「あ、すみません！」

振り返ると、キョトンとした顔の少年...青年？少年かな？
とにかく、買い物帰りなのかスーパーの袋を片手に提げてる男の子が立ってた。

「うちに何か用？」
「え？」

「うち」と言いながら、そのテラスハウスとやらを指差してる。

「あ...ここの住人さんですか...？」
「うん。あんた、誰？」
「...私、今日からここに...」
「あぁ！あんたか！聞いてる、聞いてる」

彼は袋をぶら提げて無い方の手で、私の背中を押した。

「えっ...あのっ...」
「何、入るんでしょ？入んないの？」
「あ、入ります...」
「でしょ？」

グイグイと背中を押され、門扉の中に入り緑に囲まれた庭を抜けて玄関。
彼が鍵を開けて、引き戸をガラガラと開ける。

「はい、どうぞ。いらっしゃい...ってのも変か。自分ちになるんだもんね」
「あぁ...そうなんですね」
「フハッ！何そのヒトゴト感」

だってまだ全然実感無いんです...。

雑に靴を脱いで、彼が家に上がる。
玄関には大きな靴箱があるけど、靴も何足かタタキに出されたまんま。

私も靴を脱ぎ、とりあえずそこに揃えてキャリーが床につかないように持ち上げながら家に入った。

「お邪魔しまーす...」

...って、自分ちなのか。
やっぱ実感無い。

さっき彼が入って行った部屋を覗くと、そこはどうやらリビングダイニング。
大きな一枚板で出来たダイニングテーブルと、黒い革張りのL字ソファ。
壁際にはテレビがあって、縁側も見える。

「その辺、座ってなよ。お茶でも飲まない？」

さっきの彼がキッチンらしき場所からコップをふたつ持って出て来た。

「あー、この家キッチン独立なんだよね。オンナノコだったらカウンターが良かったんじゃない？」
「いえ...そんな事は...」

むしろ他人と暮らすなら独立型の方が気が楽かもしれない。

彼がダイニングに座って対面になる所にコップを置いたから、そこに座らせて貰う。

「オレ、二宮和也。28歳」

突然自己紹介した目の前の彼が、微笑んだ。