PARACAGE【ars】 (ページ2)

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2.たった三日。ページ2

三日！？
三日でここを出る！？

すぐ思い浮かんだのは、もちろん実家。

だけど、実家には兄夫婦が住んでいる。
こないだ下の子が産まれたばっかで、大変な状態だって話を母親から聞いた。
そんな状態の家に突然「私も今日から同居しまーす！」なんて呑気に帰れない。
幼児と赤子抱えたお義姉さんに、気を使わせてはいけない。

じゃあ、今から不動産屋さん...って夜だし！
明日行って部屋決めて、即引っ越し？そんな事出来るの！？

あわわわわ...とパニックになってる私に、ゲンさんが「お詫びに！」と言った。

「Aちゃんが住める家は、一応もう用意してあるんだよ」
「...え！ホント！？」
「ただ、あのー...今流行りのシェ...シェ...他人が同居する、あの、あれ」
「シェアハウス！」
「それ！」

お互いを指差し合う。

「ワシの古くからの友人の家が、それをやってるようでな。一部屋だけ、空いてるらしくて」
「そうなの？」
「でも、他人との同居なんて...Aちゃん、平気か？」
「平気平気！私、全然人見知りしないし！むしろ、ちょっと興味あったの。シェアハウス！」

よくテレビで観て、少し気になってたのは本当。
でもそれ以上に、ゲンさんに責任を感じて欲しくなかった。
もう本当のお爺ちゃんみたいな存在だし。

「Aちゃんがそう言ってくれるなら、三日後に入居できるようにワシから話を通しておくけど大丈夫か？」
「うん、荷物も多くないし。それもとりあえずは実家に送っておく事にする」

それ位なら、許して貰えるだろう。
後ですぐ電話しよう。

ゲンさんが帰った後、私は今までに無いスピードで荷物をまとめはじめ、翌日には段ボールを貰って来て、翌々日には中身の詰まったそれらを実家に送った。

三日後。
私は住み慣れたアパートを出る事になる。

お見送りに来てくれたゲンさんが、泣きながら「餞別に」とお蕎麦をくれた。

「シェアハウスの人達と食べるね」と約束して、お別れした。
ゲンさんは、見えなくなるまでブンブン手を振ってくれていた。

私も、ちょっと泣いた。
嘘。
すっごい泣いた。
泣き過ぎて、すれ違う通行人たちにドン引きされた。

土曜の昼下がり、ゲンさんが書いてくれた住所のメモを見ながら住宅街を歩く。
必要最低限の荷物とお蕎麦を入れたキャリーをゴロゴロひきながら。

「...ん？」

見えて来たのは、竹垣に囲まれた日本家屋。
『シェアハウス』って名前があまりにも似合わない佇まいに、私はもう一度メモを見た。