桃色の指先と翡翠の憂鬱 53

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午後の授業の後、ダンス部の活動。

大会が近付いて振りも完璧に入った。

後は振りの精度を上げるだけで、カメラを回してわざと部活終わりにもう1度通しで踊らせた。




川｢遅れてごめんね｣

川島先生がスーツではなくて、レッスン着でダンス室に入って来た。

髪の毛は汗で濡れてるし、スーツ姿じゃないからみんな驚いてる。



阿｢今日は来ないはずじゃなかった？｣

川｢僕も顧問ですから。みんなもう一度、最初からお願いします｣

カメラは回したまま、音楽を最初から掛け直した。

レッスン着の川島先生も端で一緒に踊ってる。

舞台の踊りもあるのに、振りは川島先生にもしっかり入ってる。



川｢衣装ももうすぐ届くからね。部長、解散で｣

カメラを止めて、データをノートパソコンに移した。

今夜また佐久間に見てもらう。

部員たちが帰って行く時に川島先生はドアの前で1人1人に声を掛けてる。



阿｢川島先生、C組の先生が相談あるって｣

みんなが帰って、部室の鍵の確認をしながら準備室でのことを川島先生に話した。

川｢不登校ですか…｣

阿｢まだいると思う｣

川｢この格好で職員室に行くのは…｣

阿｢ジャケット貸すよ｣

スーツのジャケットを脱いで、川島先生に渡した。

川｢ちぐはぐですよね？｣

阿｢カジュアルダウンしたみたいで、良くない？｣

俺の紺のジャケットは黒に近いから、上下黒のレッスン着でも違和感はない。

川｢お借りします｣

阿｢準備室行ってるね｣

川｢はい｣



2人でダンス室を出て、川島先生は職員室へ、俺は準備室に向かった。


本高先生が机に突っ伏して寝てる。

阿｢本高先生｣

本｢は、はいっ｣

阿｢もう最終下校時刻だよ｣

本｢すみません、寝てました｣

阿｢お昼の時、ありがとね｣

本｢何がですか？｣

阿｢何となく気づいてるよね？｣

本｢…はい｣

阿｢何となくのままでいてくれると助かる…｣

本｢阿部先生、正直ですね｣

阿｢ありがとう。話したくないというか話せない…｣

本｢みんなそんなもんじゃないですか？C組の先生だって、教務主任が家も職場も一緒で、参ってる感じするし｣

阿｢川島先生と俺も同じだけどね｣




それもあと半年か。

川島先生は教師よりお父さんに跡取りとして認められたいと、経営と舞台に専念してて学校の比重が下がってる。


川島先生が作ったダンス部だから、なんとか時間をやりくりしてダンス部の活動を見てくれてるけど、佐久間がいた時のダンス部への熱とは違っている。

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