後輩のつまみ食い【企画】 (ページ9)

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通勤ラッシュ、もみくちゃにされる満員電車。
会社に着けばデスクワークに上司から次々と回される仕事に書類。当たり前のように残業。
帰り道はぐったりして電車に乗る。
そんないつも通り、つまらない日々を送る。

筈だった。

その日の仕事の帰り、電車を降りて改札を出た。

ぴ、とICカードを通してカツカツと低いヒールを鳴らす。

目の前、バイクに乗ろうとするふわふわの栗毛に見覚えがあって、懐かしい気がして、思わずじっ、と見つめてしまった。
その人は私に気付く様子もなく、そのままヘルメットを被って走り去ってしまった。

まあ、気のせいだよね。

今日もいつも通り、何も変わらない1日だったなあ。

翌日、いつものように宝物入れに元気を貰って出社。
すると、他の部署から移動をしてきた社員の紹介があるの事で、この部署の少ない社員が部長の机の近くに集まっていた。

目に入ってきたのは昨日見たようなふわふわの栗毛、ぴしりと着こなしたスーツ、眠たげな瞼の重い色素薄めの茶色の瞳。

「えー…今日からこちらでお世話になります、………………です。よろしくお願いします。」

聞き覚えのある名前、いやでも同姓同名かもしれない。
そんな上手い話があるわけない。

ぱちぱちぱち、少ない拍手の音で現実に戻ってきた。
さあ仕事に入るぞ、と部長が言うので皆それぞれのデスクへと戻る。

今日も退屈なデスクワークだ、きっと。

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