5.A humanoid error. ページ18
「おめでとうございます、貴方は厳正なる抽選を行った結果、『自律式発達手助けロボット』の試験者に選ばれました。」
私はダンボールの封をカッターで切り、衝撃緩和ビニールやら毛布で包まれた「それ」を取り出した。
「本商品は人間の生活を手助けする為に開発された人工知能が搭載されたロボットです。試作品段階ですので、何かと不具合が尽きないと思われます。不具合や生活に支障が見られた場合、改正部分の報告、または返品をお願い致します。」
真っ白な肌。小さな鼻。猫っ毛の栗色の髪。ほんのり色づいた桃色の頬と唇。私はまるで人間を扱うように、そのまっさらな頬に触れた。
「『開発番号02番』は、人間の温もりを10秒間感知すると起動します。起動後、周囲の状態を感知し情報を得るまで5分ほどかかります。首の後ろにあるコンセントに充電プラグをさしてお待ちください」
抱きしめた彼の身体はやわいのに冷たくて、死んだ母の身体を連想させた。待つ間の5分は長いような短いようなで、ささくれを剥いたり薬瓶のラベルを剥がしたりしていた。
「情報の処理が終わると、鼓動が始まり呼吸をします。本商品は限りなく人間に近い構造になっております。食事を必要としませんが、摂取した場合消化することが可能です。水分は分泌類として体外に出されます。なおロボットの生活費、光熱費はこちらで全額保証します。」
胸に耳を当てると、とく、とく、と血液が流れ、心臓が波打つ音が聞こえる。形のいい唇からは酸素が吸われ酸素が吐かれる。その心地良さに、私は眠ってしまいそうになった。
「頬が熱くなり始めたらうなじにあるAスイッチを押したまま名前を呼んでください。それが『開発番号02番』の名前となります。90日後、引き取りに参ります。それでは、ご使用の方、よろしくお願いします」
「……ショッピ」
名前を呼べば、今紫色の瞳孔が動き、瞬きをして、指をいくらか動かした後、私の顔を見て笑った。
「今日からよろしくお願いします、Aさん」
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