→ ページ14
そんな風にじゃれあいながら、手を引かれるがまま、彼について行くと、立ち止まったのは少し古めの喫茶店の前だった。
「ここは？」
「別に」
ちゃんとした答えになってないんだけど、と言いかけるけど、彼が颯爽と中へ入って行ってしまったためその言葉が口から出ることはなかった。
店内はカウンターが4席と2人がけのテーブルが少々。時間が時間だからか私たちの貸切のようだ。
彼は1番日当たりのいい席を選ぶと、ずいっと私の方にメニューを差し出してきた。
「何食う」
簡潔な問いに、ちょっと待ってと答えメニューを覗く。
そこにはカウンターの向こうに見える初老の店主さんの手書きであろう文字で色とりどりの料理が載っていた。その写真のせいで、彼とのデートがあるから、とお昼を抜いていた私のお腹はぐぅ〜〜と情けない音を立てた。
「…………。」
彼の顔を見ながら何も言えないでいると、
「腹の虫も元気やな」
と意地の悪そうな笑顔を向けられる。
「お腹減らしてきたの！」
恥ずかしさで赤くなる顔を隠しながら、再度メニューに目を走らせる。
オムライスとナポリタンどっちにしよう…。
さっきから迷っているその二択を決められずにいると、上からすっとメニューを奪われてしまった。
「優柔不断やな。おおかたオムライスかナポリタンで悩んどるんやろ」
「何も言ってないのになんでわかるの？もしやショッピくんエスパー…」
「アホなこと言っとらんと早く決めろや」
なんでとは言いつつ、ショッピくんてば私のことよく分かってる〜〜と心の中で惚気る。
「じゃあオムライスにします」
私が決めると、彼はすぐに店主さんを呼ぶ。
「すみません。オムライスとナポリタン１つずつ」
やってきた店主さんにそう伝えたショッピくんを無言のまま見つめていると、
「別に、俺も食いたかっただけやし」
と返された。
数分経ってやってきたオムライスは卵がトロトロとふわふわの中間で、ケチャップも特性でこれにして良かった…と心から思った。しかも、ショッピくんを拝み倒して一口貰ったナポリタンも絶品で、食べ終わってないくせにまたこのお店に来ようね、と約束した。
不意に先に食べ終えた彼が、口元をとんとんと叩く。もしかしてケチャップ…とテーブルに置いてある紙ナプキンを取ろうとすれば、少し早く動いた彼に奪われ、口元を拭われる。
「なっ、なにして」
この男、僅か数秒の間に非常に恥ずかしいことをしでかした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
