122．それ私も見た！ ページ22
「Aが元気になってよかった！」
「ハルも心配で心配で……」
「2人ともありがと」
私の風邪は初日から徐々に悪化し、治るまで1週間近く経ってしまった。長引いた風邪が久しぶりだ、なんて考えながら私の回復を嬉しそうに喜んでくれるハルちゃんと京子に笑いかける。
「この紅茶でも飲んで元気になってください！」
「ハルちゃん、もう治ったよ」
「いいからいいから」
「京子まで……」
体調に気遣い労ってくれる彼女達がいれてくれた紅茶を口に含む。温かくて美味しいと考えながら3人で机を囲み、昼食に皆が集まるまでの女子会を久しぶりに楽しむことにした。
「いよいよ明日だね」
「そうですね……。ハル緊張します」
どうやら白蘭との戦いである“チョイス”の日はもう明日に迫っているらしい。こんなときに風邪ひいて迷惑かけるつもりなかったのに、と今さら終わったことを悔しく思っても仕方のないこと。
ビアンキさんが修業中の彼等や京子達に風邪をうつさないようにとお見舞いを制限したりと配慮してくれた。私の風邪は疲労と栄養失調からの高熱だったらしく、ビアンキさんは時折切ない表情をしながらも必死になって看病してくれたんだっけ。
「そういえば、獄寺さんがAちゃんのいる医務室の前ウロウロしてビアンキさんに叱られてましたよ」
「あ！それ私も見た！」
「あの人すごくわかりやすいですね……」
そんな会話をしてお互いに目を合わせていたハルちゃんと京子は、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら「両想いだと思うんだけどなぁ」と私に視線を向ける。
その様子に、2人は私が隼人のこと好きって思ってるんだなと考えながら肯定も否定もせずに笑って誤魔化した。……優しい隼人のことを好きになる努力はしたいから。
「そういえば、最近ツナさんの様子変わりましたよね」
「確かに声かけたとき上の空だったかも」
「……綱吉のことだし、明日のことで緊張してるんじゃないかな？」
「そうかもしれないね」
私が原因だと思った。振られて期待させるような態度をとってきた綱吉に苛立った私は『責任とか感じないでね』なんて言って彼を傷つけた。
風邪で朦朧とした頭だったことを言い訳に使いたくはないが、正直あの日から綱吉と顔を合わせたくない。こんなにも同じ環境で衣食住を共に過ごすことが心苦しいとは思っていなかった。
すると、出入口の扉がウィーンと音をたてて開く。「あ゛！」と聞こえた突然の大声にビクッと肩が揺れた。
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作者名：√A | 作成日時：2022年8月22日 13時
