戦場の晩餐を、君と共に…其ノ漆 ページ14
上条が横浜の地を踏んだのは、夕方になってからだった。多数の土産を手にした彼は、タクシーを拾って探偵社へと向かう。
何となしに見た携帯に、特に変化はない。
帰ることを伝えていないのだから当然ではあるが、彼の性格的にメールが来ているのでは、と勝手に期待していた自分がいた。
(厄介な事件もあったしな…)
ニュースサイトを見る限り、どうやら解決はしているらしい。今は後始末にでも追われているのだろう。
数十分後には、見慣れた赤煉瓦の建物に到着した。
昇降機で上に行き、廊下を少し行けば武装探偵社のプレートが提げられた扉が目の前にある。帰ってきたという実感だけでなく、また緊張してしまうのがとても不思議だ。
『――只今、帰りました』
「おや、ようやく戻ってきたかい」
「上条さん、お帰りなさい！」
「斎、勿論お土産あるよね？早く頂戴！」
扉を開ければ、ちゃんと迎えてくれる仲間がいる。中也に言った言葉がもし嘘になったら、と思ってしまったのが少し恥ずかしい。
『乱歩さんにはこれ。後は適当に分けて大丈夫』
ガヤガヤと騒ぐ社員達に土産の袋を渡していると、
「――あの、上条さん」
『…敦』
何やら遠慮がちに声を掛けてきた彼。神妙な顔つきで目の前にやって来たと思えば。
「す、すみませんでしたッ！！」
『え？』
直角に折られた腰と耳をつんざく謝罪に、思わず一歩後退ってしまう上条。
「芥川に襲撃された時、僕のせいで怪我、させてしまいましたし……」
『…嗚呼、それか。別にもう気にしてないが』
「えぇッ！？」
『あれくらいの怪我とか…まあ、色々慣れてるからな。まさかずっと気にしてたのか？』
「ぅ ﾞ…」
敢えて言葉を濁した部分やら何やらに、敦は分かりやすく反応してしまう。それに何故か笑えてきて。
革手袋の手を白髪の上に置き、上条は耳元で囁いた。
『俺は、大丈夫だ。敦も含め、此処は優しい奴らのいる場所だからな』
その言葉に、敦はコクりと頷いて返した。
『太宰の入れ知恵か？』
「酷いなぁ…アレは国木田くんさ。私は何もしてないよ」
自分の席に行くと、そこには太宰がわざとらしく椅子を占領している訳で。
『ふん、じゃあそういうことで。…それより、何か言うことがあるだろう』
「うふふ、お帰りなさい斎」
『ん、』
帰ってきたのに一番に気づいた癖に、すぐ近くに行くまで何も言ってくれない。そんな不満を込めて言えば、一番欲しかったハグと言葉という形で返ってきたのだった。
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます！ (2018年3月21日 20時) (
レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい！応援しています！ (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔夜 | 作成日時：2017年3月20日 20時
