戦場の晩餐を、君と共に…其ノ陸 ページ13
『…さて』
中也には先ほど連絡を入れ、そして待機を命じられた上条。
彼がこの最上階にくるまで、この組織を操っていた側の情報がないか、資料を探してみることにした。
“空腹”の方は問題ないし、暫くは喰わなくても耐えられそうだ。
(なんて2人の前で言ったら、絶対怒られるけど)
呑気に机の抽斗の書類を漁っていると、
「おいおい、何してやがる」
『あれ、随分早いな。もしかして部下置いてきた?』
「どうせ下っ端しか残ってねェからな」
『それもそうか。……あ、これ』
そう言って渡された紙の束に目を通す中也。
一番上は契約書で、そこにあったのは裏切りが疑われていたが証拠が無く、処置を保留にしていた組織の名前。これの他にも、マフィアの金を流していたと証明できる書類が多数あった。
今回の黒幕も、その組織であるということらしい。
「よくやった、斎。これなら面倒事が一気に片付けられそうだ」
『うわっ』
荒っぽく頭を撫でられ、少し上条は驚く。
手袋に包まれても無骨さが分かる中也の手を退かそうとして、ふとそれは寸前で止まり、そして下ろした。
「どうかしたか?」
『…否、何でもない。それより早く帰ろう、俺疲れた』
上条は何かを振り切るように、そう言い放つ。
訝しげな中也の視界には、震える“素手”の右手を押さえ込む左手が入っていなかった。
後始末や頭への拷問など、指示を出し終えた中也は上条を乗せ、先に車でホテルへと向かっていた。
『――じゃあ、中也はまだ此方に残るんだ。俺はお役目御免って訳だな』
「なァ……」
『ん?』
「…やっぱり何でもねェ。見送りはできそうにないがな」
『別にいい、今生の別れって訳じゃないから。…次会ったら敵同士だけど』
「そうだな」
『なぁ…俺さ、マフィアにいたこと、後悔してないから』
「…は?何だよ急に」
『太宰と中也に出会わなければ、俺は多分空っぽで、感情も何も分からない奴になってたと思うんだ。……でも、戻ることは出来ないよ。俺が俺でいてもいいって言ってくれる、優しい人達がいる場所があるから。どれだけ強要されて、五体満足じゃなくなっても、体引き摺って帰ろうと思えるくらい大切なんだ』
だから中也は悪くない、と加える上条は最初から分かっていたのだろうか。
課せられたこの任務に、本当は何が含まれていたのかということを。
車内には、物憂げなクラシックだけが響いていた。
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時