彼女はもともとⅢ (ページ7)

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ママの部屋にページ7

ママの部屋に入るのは私くらいだろう。

嫌われていた美しい母の部屋は、部屋主がいない今でもホコリ一つ落ちていないのは私の掃除能力のおかげだろう。

『ママの部屋。いらっしゃい』

青で統一された部屋は、ぽっぽちゃんの瞳の色と同じ
息を一杯吸うと大きく吐き出す。

ホコリが鼻をこそこそとくすぐると、足を踏み入れるように指示をする。

物言わぬ彼女の、白い手袋をつけたスラリと伸びた手を引っ張る。

歩いた事がバレたらこの子の首が飛ぶ。

「えっ、えっ？！何を？！」

『首とまだ仲良くしたいでしょう？』

へらりと笑って連れ込む。

「えっ、あっ、A…さ『もう一回。』

様は付けないで。名前呼んで。

ぎゅうと抱きしめるとスリスリと頭を押し付ける。

お母さん、に、見立ててるのはおかしい。
似ているのは髪色だけだって。わかってる。
髪色すらも似ているか疑問だけどさ。
でも、寂しかったの。
悪夢を見ないと会えない母の姿にあなたを重ねてるのはとても申し訳ないけど。

「へ…あ、ええと…」

こちらはこちらで顔を赤くしてプルプルと震える。
目には涙を薄っすらと浮かべて私をあやす

『歩くの、疲れるけど好きなの。
でも、余計な筋肉つくからって、
パパも、兄弟も、人形がほしいのよ。

ママのような。生きる美しい、
でも意思をもない。
愛せば愛を返す自動人形(Automata)が欲しいのよ。』

足が、あなたの細い首が
しっかりとした、男らしくもスラリと伸びた手が指が

『羨ましいの。私に持ってないものを持ってるから。』

ベッドにぽん、と押せばなんの抵抗もなく彼女は倒れ込む。
キシッとベッドが鳴り、焦ったように顔色が変わる。

羞恥と、焦りが見て取れる。感情を表に出せることだってとても羨ましかった。

『足もね、真っ直ぐになるように、ベルトで強く縛られてね。
そのままどれだけ過ごしたか。』

つぅと足を撫でる。
「ま、待ってください、A！」

ハーフアップの髪も解いて、ストールで口元を覆えばもう、目の前の彼女は、私の知ってる人の顔になる。

『イソップくん』

声をかけた彼はビクッと体を強張らせて、私の次の言葉を待っていた。

「ええと…」

馬鹿馬鹿しくなってくる。
言えば言うほど、意識すれば、するほど。
だって彼らは来るはずない。
助けを跳ね除けた、愛を跳ね返した私の事を助けてくれるはずがない。
そもそも、サバイバーは普段荘園から出ることはないはず。

『ごめんなさい。少しだけ、少しだけだから。』

例外はあるけれども。