彼女はもともとⅢ (ページ49)

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本来はページ49

『はっ…はっ…』

本来はこうであるべき試合。
アイデンティティを護るために行うランク戦。

「…よ、あんたこんなことに興味ないかと思ってた。」

『まさか。私も聖女であると共に一人の人間よ』

試合中にもかかわらず彼は私に手を差し出した

『さっきの弁護士のようになるとは思わないのね』

「本来のあいつはああだし、ほかのとこから来たあいつだろうな。
俺たちの知ってるあいつは仲間思いだ。意外とな。」

『へぇ。』

その手をぐっとつかむとどこかで鏡の出る音が聞こえる

『隅に逃げるわ。』
「おう、俺は解読進めるわ。」

彼は解読器に手を伸ばす
その背は大きくて兄みたいだ。

『…手伝うわ』「おまえがいないとこの試合勝てねーだろ。」

占い師も弁護士も傭兵も今回隠密に回ってたのは私の聖職者という外在特質が悪い方に働いたから。
そんな中、私が見つかり既に９割り救助をされている。

次に吊られたら私が飛ばされる。

サポート・解読メインの私が飛ばされればあとはぐだぐたになるだろう。

『せめて、１つは通電させたい。』

「それも良いけど手当てしてくんね？」

『あぁ、うん』

荘園主は本当に何を考えているか分からない。
怪我をしているナワーブを試合に出すなんて。
彼も彼で他の人に変わってもらえばよかったのに。

「…よし、これでまだ舞えるな」

震えている手で、足で
そのくせニコニコと笑うから腹が立つ。

『……舞わないでよ。』

足痛い癖に何してるのさ。

『誰かに変わってもらうとかしなさいよ』

背から飛び出た鮮血が未だに頭に焼き付く
花弁が散ったように赤い鮮血は私の頬にも付いたままだ

私のせいだ。

『皆には…
貴方には傷ついてほしくない…』

切なる願いだった。

願う相手はヘラッと笑うと

「傷つくな、は無理だな。」
と笑った。

「…俺は負けないし、屈しない。
必ず勝利を収める。それがグルカ兵だ」

『グルカ兵だとしても、ナワーブは一人の人間なんだよ』

別に私は負けてもいい。

「そういう訳にも行かないんだよな」
ハスターの野郎と賭けてんだよ。

「大切な兄弟の運命。」

勝手に賭けないでほしい。

そう言う前にハンターの影が見えて走り出す私とロッカーに隠れたナワーブ

「こそこそとネズミみたいに隠れてた子見つけたわ！」

『あら、見つかっちゃった』

逃げることであんな怪我する人が増えるのではないか。

そう考えると逃げる足は少し重いけど逃げずに立ち止まる方が迷惑だ。

『神に良いように使われてたまるものですか！』