彼女はもともとⅢ (ページ48)

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夕食ページ48

『久々に見た気がする。』

「どうも」

『どうもトントンコンビ』

「こいつと一緒にしないでくれる～？！」

不本意だよ！とプンプンと怒りながらとなりの皿から唐揚げを一つ取っていくモートンに
ノートンはとなりの皿からにんじんを持って行く

お互いに苦手な物を相手に押しつけ
何を言うまでも無く黙々と食べている。

行儀の話しはノートンはとても手厳しい(見た感じ)のに

『仲良し…』

「どこが？」

指摘しようか迷ったけど、まぁ、いいか、と喧嘩するほど仲がいい。とだけ言って夕食の唐揚げを綺麗に平らげた。

心ここに在らずのノートンにヒラヒラと目の前で手を振ってみるも手元を見ているのでそのままお皿を持って行った

『美智子さんおいしかったです』

「おおきに」

奥の厨房からは自分の分は自分で作る組が「こうか…？」と苦戦していた。

「ちょっとちょっと！待ってよ！」

『うー？』

「そんなテンションの低いうーははじめてきいた。」

僕の真似？とうれしそうに聞き返す彼に
そうかも知れないと答えると

「うー☆」

と返された。
なんだこの茶番は。と私は踵を返した

『懺悔の時間があるの。ごめんねモートン』

「えぇー？」

懺悔の時間は聖女らしい事していない私が始めた唯一のこと。
居るはずもない神様に呪詛を呟く時間。

『私が私であるために…』

焦りが来ているのかとしれない。
あの時ナイチンゲールから言われたあの言葉が忘れられなくて

『……』

荘園主になると存在が消えてしまう。
その事実が自分には重く感じる。
でも、もしナイチンゲールの言ったとおりなら

『…懺悔といえるのならば…ね』

「なにそれ」

彼はニコニコ笑い
なんか最近冷たいよね
と彼に指摘される

『……だって』

ぐっと飲み込み、自分だけの問題にしてしまえば距離を縮め彼の口に人差し指を当てた

『see…』

バチッと磁石がくっつくように視線が合えば
私が逸らす前に彼が目をそらす。

彼は上気した頬を冷やすために両手でパタパタと仰ぐと
「からかわないでよー！」と笑った。

『…揶揄い甲斐があるんですもの。』

「……あーも…ずるいなぁ。」

何がずるいかはわからないけど、彼の上気した頬の色に感づかないほど、鈍感ではない

にこりと微笑み今度こそ距離を取った。

『モートン試合、頑張ったね』ひらひらと手を振ると彼はありがとう、と微笑み

「次の試合、よかったら一緒に行こうよ。」

と私に手を振った