彼女はもともとⅢ (ページ44)

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ぐちゅりページ44

熟れすぎたトマトが落ちるように
人がぐちゅちりと音を立てて落ちる

その感覚？原因？
よくわからないけどその様子だけ、謎に覚えていた。

『ヘレナ！』

手ではなくて杖をつかむ。

ぶらんと腕がつりそうになるのを必死に我慢して助けを呼んだ。

ゲームで出来た傷はすぐ治る。腕がなくなっても、内臓を抉られて一度命を落としかけても。
ゲームで出来た傷ならすぐ治る。

しかし、このように遊びに来たときなど

“ゲーム外”と“荘園内”で起きた傷は治るのに時間がかかる。

「離してA！貴方まで落ちてしまうわ！」

『ヘレナ！私はすぐには諦めないの！』

しかしずるずると手汗で杖は落ちていくし
私の体もどんどん二回から落ちようとしていた

「もういい、もういいのよA」

ヘレナは申し訳なさそうに笑った

「足を滑らせた私が悪いの。」

『まってて、待っててね！すぐ助ける！』

私も落ちそうになったとき、フィオナやイライといったカスタム戦で唱えていた呪文が頭をよぎる

「もうだめ…離して！」

私の膝半分が下に引っ張られてしまえば
瞬きの早さで落ちていく。

その様子が少しだけゆっくりに見えた
ノープランだが、一応あれでも神様ですし

(邪神を呼ぶなんて私も墜ちたな)

ヘレナの体を抱きしめると私は大声で彼を呼んだ。

『いあ！いあ！はすたあはすたあくふあやくぶるぐとむぶぐとらぐるんぶるぐとむあいあいはすたあ！』

ドロリと溶けた下の方で彼は私を見上げて私に向かって三本の触手を伸ばし私達をドロリと受け止めた

『感触はヌルヌルして気持ち悪いけど、助かったね…』

「ごめんね…Aちゃん…」

いいのいいの。
ヘレナは「離して」なんて強がってたけど怖かったようだ。
それもそう、暗い中で何かが起こるなんて怖い以外の何物でも無い。

「心眼大丈夫なのか？」

「えぇ、たまたま何かに躓いただけよ」

なんて笑うけど、私がヘレナを見たとき

《「あっ…！？」》

《『ヘレナ！』》

ヘレナは何者かに押されて落ちたようなバランスの崩し方。

『……』

見えない何かが荘園で起こっている…？
　
「これで人の子、貴様も我の配下よ。」

可愛い信者が出来た物よ。といわれたので

『あくまでも私の上はイエスキリスト様であり、また旦那もイエスキリスト様なので。』

とぷいっとそっぽを向く

「ほう、しかしなぜ呪文を？」

『羊飼いハイタを読んだのよ。
あとはあの二人の呪文。』

ハスターはﾋｴｯ、と小さく悲鳴を上げた