芸人さんと、アイ。

鈍感な君へ　河井ゆずる ページ25

◇リクエスト作品◆

ゆずるSide




全然気付いてくれへんやん

こんなにも好きやのに____________





「ゆず兄！飲んでます！？」

「飲んどるわ、っておい！溢れるて！」





酔ってハイテンションになったAは

俺に抱きついて離れない



持っていたグラスをテーブルに置いて

しがみついているAの腕を丁寧に剥がす





「また始まったで」

「Aがまたゆず兄と戯れてるわ」

「ほんまに兄弟みたいや」





なんて後輩にいじられる始末


ほんまの兄弟になんか思われたないねん俺は




そんなこと思ってる俺のことなんて

知る由もないAは嬉しそうに隣で

ハイボールを口にしてる





「それ何杯目や」

「え〜分からへん〜」





頰は赤く染まり目も完全に据わってる

これはあかんわ、完全に出来上がってる





「もうお前ここから動くなよ」

「んへへ、は〜い」





そんな可愛い笑顔、

頼むから他の奴らに見せんといてや…




Aが寝てしまったのもあって

飲み会は少し早めにお開きとなった





「Aは僕が送ります！」

「いやいや俺が送るし」





なんてくだらん論争が繰り広げられてる間に

寝てるAをさっさと担いで店を出る


それに気付いた後輩がヤイヤイ言うてきたけど




「アホか、お前らには任せらへんわ」




そう一蹴する




Aは他の芸人にも人気やから


ほんまに気抜いてたらあっという間に取られてしまう



でもなんなことさせへんように


俺が必死に目を光らせてる




鈍感な本人は何にも気付いとらんから


ある意味平和やけど





「A、少し歩けるか？」

「…う、ん、頑張る」





さすがにずっと担いでる訳にもいかず

Aを軽く揺り起こす





必死に大通りまで歩いてタクシーに二人で乗る


Aの家聞こう思ったら本人はとうに夢の中




軽くため息をついて

運転手には自分の家に着くようにお願いした




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