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洗剤を入れに回った廊下、トイレ、教室。
思い当たる節がある場所には、全部回った。
だけど、キーホルダーが見つかることはなかった。
時計の針は、結沙と一緒に教室を出たときから、さらに一周回っている。
がらんとした教室。
カーテンがふわりと揺れた。
グラウンドで行われているのであろう部活動に励む声が、風に乗って教室にまでやってきた。
じめっとした湿気と熱気を帯びた風が私の肩まである髪を揺らす。
他に思い当たる場所はないだろうか。
必死に今日の行動を思い起こす。
今日はほぼ一日中教室にいた。
昼休憩の時に、保健委員の仕事をこなしただけで......
違う。
それだけじゃない。
私は今朝、結沙の手伝いをした。
もう一人の生活委員の子が欠席してしまって、結沙だけでは大変だろうから手伝うよと、私から言い出し、裏庭の花壇へ行った。
一緒に雑草を抜いて花に水をやった。
その時に、落としてしまったのかもしれない。
私は急いで教室を後にする。
もう思いつくのはそこしかない。
お願い、見つかって。
神にもすがる思いで、階段を駆け下りた。
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裏庭にいても、グラウンドからの野太い掛け声が聞こえてきた。
粗方、サッカー部と野球部だろう。
部員たちの高らかな声は、空を覆い尽くしている暗澹たる雲にまで届きそうだった。
学校の花壇は、そこそこに大きいと思う。
朝の休憩だけで雑草を全部抜くことなんてほぼ不可能に近い。
まだちょこちょこと生えている雑草に加えて、元から綺麗に咲いている色とりどりのパンジーやビオラの花。
鬱蒼、とまではいかなくとも、それなりに花やら雑草やらが生えている。
この中にキーホルダーを落としてしまっているのなら、見つけるのはなかなか困難だ。
ひとまず、花壇の端から順番に見ていく。
手で花をよけつつ、ついでに雑草を抜きながら。
見落とすことのないように、目を光らせる。
ポツン、と頭に何か降ってきた。
それが雨だということに気づいたのは、二滴目が頭に降ってきてからだった。
傘なんてさしたら探しにくい。
幸い、まだ小雨だ。
すぐに見つけることができれば、何も問題はない。
夢中になって捜索し続けた。
どれくらい経っただろうか、十分ほどな気もするし、三十分ほどの気もする。
突然ガシャン、と後ろのフェンスが揺れて、集中力が解けた。
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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時