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『綾瀬ーー!』
ビーッと笛の音が聞こえて私を呼ぶ先生の声がする。
全員の動きが一時的に止まった。
『ボール持ったままウロウロするなー!トラベリングやぞー!』
「あ..、ごめんなさい。」
『練習やからええけど次は気をつけろよー。じゃあ再開ー!』
またビーッと笛の音。
止まっていた時間が動き出す。
みんながボールを持つ私の周りに集まってきた。
こういう時、優柔不断な私はとっさに判断することができない。
『Aちゃーん!こっちー!』
「舞花ちゃん!」
力一杯投げたボールが舞花ちゃんの元に届く。
ダンダン、とドリブルする音が体育館中に響き渡った。
振動が体に伝わってくる。
『結沙ー!』
「はーい。」
舞花ちゃんが投げたボールが綺麗に結沙の元に飛んだ。
結沙はただじっとゴールだけを見据えていた。
ボールが、飛んだ。
コートにいる全員がその行く末を見守る。
ガコン、と音を立ててゴールに入った。
わ!と歓声が起こる。
『さすが結沙!』
「原田ちゃんのパスがよかったからだよ。」
同時に試合終了を告げる笛が鳴る。
点数は同点。
でも結沙が入れてなかったら負けてた。
『じゃあ女子はコートから出ろよー。男子ー、コートに入れー。』
女子と男子が入れ替わる。
端っこに座ってたら少し汗をかいた結沙が隣に座りにきてくれた。
「おつかれー。」
「おつかれ、かっこよかったよ。」
「ありがとー。」
結沙が恥ずかしそうに笑った。
「トラベリングで怒られてたね。」
「..恥ずかしい限りです。」
「大丈夫大丈夫、何とかしたかった気持ちは伝わったから。」
「でも気持ちだけじゃどうにもできなかったや。」
「まあバスケだからね。」
バスケはできないけど、好きだ。
ダンダン、と体育館に響き渡るボールの音。
みんなで同じゴールに向かってぶつかっていく感じ。
なんか、好き。
ボールを自由自在に操れる人はボールと一体化してるみたいでかっこいい。
自分にはできないことをさらっとできる人は無条件に憧れてしまう。
そう思う人は、きっと私だけじゃないと思う。
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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時