737.初めての音 ページ17
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「ちょっとヒヤッとしますよ〜」
「はい、」
ヒヤッとした感覚が下腹部に感じ取れて
それと同時に、隣にある機械からシュンシュンシュンって小さな規則的な音。
「心臓も元気に動いてるわね」
そのセリフで、この音が心臓の音なんだって気づいて
「まぁだ小ちゃいけど、、ほら、これわかるかなぁ」
見える？って先生が指さして教えてくれた小さな小さな影は
お腹に赤ちゃんがいるんだって教えてくれて。
小さくとも初めて見ることのできたその命に感動した。
近くにいた看護師さんが、微笑みながらティッシュを渡してくれて
自分が泣いてることに気付いて恥ずかしくなって
すみませんって言いながら、それを受け取った。
「初めて見た時は、皆さん感動しますから」
そういって笑う看護師さんは、先生と同じ優しい瞳をしてる。
「予定日はー、、10月24日頃かしらねぇ｣
さらっと言われた日付に思わず、へ？って変な声を出してしまう。
｢出産予定日。うまく行けばね？｣
｢ほんとですか･･･｣
｢でも、体調は人それぞれだから、相葉さんは前回のこともあるし、出産までしっかり経過見ていきましょうね｣
｢はいっ｣
一通りエコーを見て、ジェルを拭き取ってもらうと
服を直して体を起こした。
「あ、そうだ。引っ越しの準備、誰か頼める人いたかしら？」
靴を履いていると、パソコンの画面を眺めていた先生はそう言った。
「あ、友人が手伝ってくれることになって、、」
「そう、よかったわね、(笑)」
「はい、」
「通院は、うちのままでいいのかしら？近くに他の病院があれば、そっちに紹介状書くけど、、」
「あ、今のところはこちらで診て頂きたいんですけど、、」
「相葉さんが、いいならうちはいいけど、、家から遠くないの？」
「はい、今の家から来るのとそんなに時間は変わらないと思うので、、」
「なら、大丈夫ね」って頷きながらパソコンに何かを打ち込んで
手元のカルテにもペンを走らせる。
「･･･引っ越しは1日かかるでしょう？」
ペンを置くと、再びこちらに体を向けて
心配そうな顔で、そう聞いてきた。
「そうですね、、」
「じゃあ、しっかり休憩挟んで。無理はしないようにね」
「はい、」
「他に心配なことはないかしら？」
「大丈夫です、」
「じゃあ、何か不安な事とかあったらいつでも連絡入れてね」
「はい、ありがとうございます、」
最後に次回の予約だけとると
待合室に戻って会計だけ済ませて病院を出た。
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作者名：にゃん | 作成日時：2020年3月21日 9時
