夢を見る ページ16
その日の夜、私は夢を見た。
前に見た衝動か規範かの夢ではなく、幸福感に満ち溢れた夢だった。
私と希さんが、同居している夢。
私も彼も楽しそうに、幸せそうに笑っていた。
この夢のとおりになればいいのにと、
昔の私なら思ったかもしれない。
けれど、今の私は、その夢にとてつもない違和感を感じる。
…小説を読む時によく考えるのだが、
「登場人物は本当に幸せなのか」という問いに引っかかったのだ。
果たしてこの笑っている私は、
昨日見た違和感の正体を知っていて幸せなのか。
_『良かった、これで、』
そして希さんは、
本当に敵としての立場でないのか。
_『世間一般的に正しい精神に、だよ』
フラッシュバックする記憶の断片を辿ると、
やはりあの夢が本当の幸せのようには思えない。
偽りの、騙されたままの幸せなんて、欲しくない。
「絶対に……嫌だっ……」
…
…
…
…
…
_「何が嫌なんだい?」
「…えっ」
誰もいないと思ってたのに。
どうやら、朝食か何かを持ってきた希さんが居たようだ…
目を開く。
すると眩しい朝の光が見えた。
けれど、私の病室じゃない。
風があるし、周りは白くない。
私はまだ夢を見ているのだろうか?
「望、夢遊病発症した?」
「…私寝ながら歩いてここまで来たんですか」
「そうだよ、そして急にここに座ってまた寝始めたからびっくりしてさ…」
ここは…
中庭かなにかだろう、周りに緑がいっぱいで、私が座っているのは木製のベンチだ。
なんとご丁寧に白衣が私にかけられている。
「…ご迷惑をおかけしました。白衣返します、すみません」
「いや、大丈夫。…にしても夢遊病かぁ」
また厄介なものにかかったねと、
担当医は言う。
もしかしたら、
睡眠時歩行をしている時に中庭という外に出たというところで、ここから逃げたいと思っていることに勘づかれたかもしれない。
…この人は顔に思っていることをあまり出さないから、読めないが。
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時