問いの少女 (ページ15)

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死への恐怖ページ15

何も無い、浮遊感。
最初に感じたのは、それだった。

そして、口になにか入ってくる。
薬？錠剤のようだ。とてもザラザラしていて、気持ちが悪い。

誰かが会話しているのが分かるが、
何を言っているのかはさっぱり分からなかった。

そして頭が重い。
枕がどんどん沈んでいってるような気がする。
頭で何か考えようとすると、意味不明な文字列が並び、それを拒む。

目を開けられない。
まぶたが重い。
そして右目の端に水滴の感覚。

なんだろう、この虚無感。
私、そろそろ死ぬんじゃないか。そんな考えが頭に過って文字化けし、同化した。

私、死ぬの？

そう思った途端、
会話してる人たちの声が荒々しくなった。
何処かからピーピーと機械の音が聞こえる。

すると、私の中で死のへ恐怖が湧き上がってきた。
まだ死にたくない、生きたいと、
人間らしくそう思った。

「……望、キミは死なない。だから、落ち着いて。任せて。」

さっきまで聞こえなかった人の声が、
耳の近くで響いた。
頭の中の文字列のせいで誰なのかは認識できなかったが、安心する、温かみのある声。

急に、機械の音が聞こえなくなる。
周りから、安堵のため息がうっすらと聞こえた。

「子供は無事なんですね！？」

「はい、もちろんです」

「良かった、これで、」

人の会話がそこまで聞こえて、
誰かに急に耳を塞がれた。

「……聞いちゃダメだよ、望。」

希さんの声が、私にそう言った。

…

…

…

…

…

「のぞむ、さん。そこに、居ますよね？」

「…どうして分かったの？」

あれから何時間か経って、
周りはまたいつも通り静かになった。

けれど何故か目が開けられなくて、
私はまだ布団を被って寝転がったままだ。

「何となく、です」

私がそう返せば、
大きな手が私の手を強く握った。

「…本当に、死ななくて、良かった。」

もし死んでたら、一緒に死ぬところだったよと、付け足して希さんは言う。

「冗談はやめてくださいよ」

「いいや、冗談じゃないよ。だからお願い、もうちょっと自分を大事にしてね。出来るだけ、自問をやめること。いい？」

「…はい」

遠くでカラスの鳴き声がした。