検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:1,950 hit

のぞみ ページ14

ー希sideー

気持ち悪いでしょ。
僕を貶してくれていいんだよ。

目を見開く患者…(のぞみ)に向けて、無い心で呟いた。
そう、僕もかつて…いや、今でも、異常なんだ。それを隠しているだけで。


「…何処が、気持ち悪いんですか?」

「無理して嘘つかなくてい……っ」


また患者に微笑もうとした。
そしたら、患者は泣いていた。

人間で言うところの、同情と言うやつだろうか。いらない。

いらない、と思うのに。
無視できないのはなんでだろうか。


「それに、手遅れなんてことありえないと思います…感情が消えることは無いはずでしょう?」

「…」

「そもそも、先生が言ったんじゃないですか。感情は消すことが出来ないって」


確かに、言った。
この子が「感情を消す方法はないんですか」と言ったから、「無いよ」と。

そう、無いはずなのだ。


「…じゃあ、僕はまだ人間で居られる?」


そう口にして、はっとした。
恐る恐る患者の方を見ると、見たことの無い微笑みを僕に向けている。


「希さんは、人間ですよ。」


もし、この時の為に人生があったのならば、
僕は救われる。














ー望sideー


「…望。」

「!」


顔を上げた担当医が呼んだ名前が、聞こえた。
のぞみ。そうハッキリと。

なら、私の名前は月野望、なのだろう。

私は名前が聞こえたならと思い、
横に置いてある本を手に取って開いた。


_『神に問う。無抵抗は罪なりや?』

_『人間、失格。
 もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。』


ああ、この本は、あの本だったんだな。
そして次々に、持っていた本を開く。


_『過去も未来も存在せず、あるのは現在と言う瞬間だけだ。』

_『いちばんたいせつなことは、目に見えない』

_『縺ゅ↑縺溘?縺薙→縺悟・ス縺阪〒縺吶?』


…あれ?可笑しい。
また違う本を開く。


_『縺セ繧九〒譛ャ繧定ェュ繧薙〒縺?k縺ソ縺溘』


「……可笑しい。先生、文字が、化けるようになりました」


そう言うと、担当医は目を見開いて身震いした。


「読もうとしちゃダメだ、望」


そう聞こえるのに、
私は文字を必死になぞろうと、理解しようとする。


…分からない文字列が、永遠と並ぶ。
私を拒絶しているみたいで、苦しくて、意識が遠のいていく。

両肩に、大きな手の感覚。


「…安心…て、絶対…なせない」


脳を埋めつくしていた"問いの石版"が意味不明理解不能な文字列になったところで、
意識が途切れた。

死への恐怖→←希望の希



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:オリジナル   
作品ジャンル:エッセイ/日記, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。