のぞみ ページ14
ー希sideー
気持ち悪いでしょ。
僕を貶してくれていいんだよ。
目を見開く患者…
そう、僕もかつて…いや、今でも、異常なんだ。それを隠しているだけで。
「…何処が、気持ち悪いんですか?」
「無理して嘘つかなくてい……っ」
また患者に微笑もうとした。
そしたら、患者は泣いていた。
人間で言うところの、同情と言うやつだろうか。いらない。
いらない、と思うのに。
無視できないのはなんでだろうか。
「それに、手遅れなんてことありえないと思います…感情が消えることは無いはずでしょう?」
「…」
「そもそも、先生が言ったんじゃないですか。感情は消すことが出来ないって」
確かに、言った。
この子が「感情を消す方法はないんですか」と言ったから、「無いよ」と。
そう、無いはずなのだ。
「…じゃあ、僕はまだ人間で居られる?」
そう口にして、はっとした。
恐る恐る患者の方を見ると、見たことの無い微笑みを僕に向けている。
「希さんは、人間ですよ。」
もし、この時の為に人生があったのならば、
僕は救われる。
…
…
…
ー望sideー
「…望。」
「!」
顔を上げた担当医が呼んだ名前が、聞こえた。
のぞみ。そうハッキリと。
なら、私の名前は月野望、なのだろう。
私は名前が聞こえたならと思い、
横に置いてある本を手に取って開いた。
_『神に問う。無抵抗は罪なりや?』
_『人間、失格。
もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。』
ああ、この本は、あの本だったんだな。
そして次々に、持っていた本を開く。
_『過去も未来も存在せず、あるのは現在と言う瞬間だけだ。』
_『いちばんたいせつなことは、目に見えない』
_『縺ゅ↑縺溘?縺薙→縺悟・ス縺阪〒縺吶?』
…あれ?可笑しい。
また違う本を開く。
_『縺セ繧九〒譛ャ繧定ェュ繧薙〒縺?k縺ソ縺溘』
「……可笑しい。先生、文字が、化けるようになりました」
そう言うと、担当医は目を見開いて身震いした。
「読もうとしちゃダメだ、望」
そう聞こえるのに、
私は文字を必死になぞろうと、理解しようとする。
…分からない文字列が、永遠と並ぶ。
私を拒絶しているみたいで、苦しくて、意識が遠のいていく。
両肩に、大きな手の感覚。
「…安心…て、絶対…なせない」
脳を埋めつくしていた"問いの石版"が意味不明理解不能な文字列になったところで、
意識が途切れた。
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時