46.湯冷めに気を付けて ページ3
《安吾 side》
目の前でパソコンに向かうA。
先程、川に落ちた点と爆発物に近づいた点について叱ったからか、ちらちらと視線を感じる。
僕が怒りたかったのは其だけでは無い。
『お風呂上がりで直ぐに飛んで来ました!!』
というAは白い肌が淡い桃色に染まり、半乾きでしっとりと濡れた髪から時々水滴が滴り落ちる。
川に落ちたのも爆発物に近づいたのも、職業上仕方の無い事だ。
僕の仕事でもごく稀にあるし、武装探偵社の調査員ともなれば、危険な仕事は毎日のようにのし掛かって来るだろう。
………仕方の無い事だと分かっている。
でも、爆発があったという報告を聞き、どれだけ僕が心配したか。
電話を受けてどれだけ安心したことか。
大きな瞳をくるくると動かしながら仕事に向かう目の前の少女は、僕の不安を露ほども理解していない。
その事に、自分でも驚くほど苛立ちが募る。
「………………はぁ。」
頭を抱えて眼鏡を外すと、焦点の合わないぼやけた世界の中でも、Aの意識が此方に向いたことははっきりと分かる。
『安吾さん、どうかしましたか?』
「………髪、乾かしてきて下さい。
風邪をひきますから。
シャワールームにドライヤーがあります。」
僕の世界はぼやけている。
目の前で話すAも…………もっと言えば
Aの濡れた髪や赤い頬も潤んだ瞳も…………
眼鏡が無ければ僕は視認することが出来ない。
不思議そうに首を傾けながらシャワールームへと向かうAを見送り、眼鏡をかけ直した。
……………目の前で好きな人が風呂上がりだなんて、仕事にならない。
「…………はぁ………。
うっわ!なんです!!??」
はっきりとした世界に引き戻された途端、僕の真横でニヤニヤ笑いを浮かべた部下に気が付く。
「何時から居たんですか!?」
「Aちゃんが出てったくらいっすよ。」
「何の用です?」
笑いを浮かべながらふーせんガムを膨らます部下にほんの少しの腹立ちを覚え、つっけんどんな言い方をしてしまう。
「お風呂上がりのAちゃん、
可愛かったっすね〜連れて帰りたーい!!」
「貴女にAを連れて帰られたら二人分も仕事増えるじゃないですか。駄目です。」
「理由はそれだけじゃないっすよね?(笑)」
ふーせんガムと一緒に膨らむニヤニヤ笑い。
「何が言いたいんですか?
無駄話をするぐらいならそこの書類を片付けて下さい。」
自然と鋭くなる視線と共に小言を飛ばし、夢の国のネコのようなニヤニヤ部下を追い払った。
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あねもね(プロフ) - 美少年になりたいさん» ありがとうございます(><*)ノ~~~~~ (2018年3月12日 8時) (レス) id: 57ead714e4 (このIDを非表示/違反報告)
美少年になりたい - とても良いです。(ΦωΦ) (2018年3月12日 0時) (レス) id: 2195e11dec (このIDを非表示/違反報告)
あねもね(プロフ) - 天野紗綾さん» えそんな私のでよろしいんでしょうか!?凄く嬉しいです!!どうぞよろしくお願いいたします!!すみませんありがとうございます!! (2018年1月4日 15時) (レス) id: 57ead714e4 (このIDを非表示/違反報告)
天野紗綾 - 天野です。突然で申し訳無いのですが、私のお気に入りリストにあげさせていただいてもよろしいでしょうか? (2018年1月4日 0時) (レス) id: 17282353fe (このIDを非表示/違反報告)
あねもね(プロフ) - 天野紗綾さん» ありがとうございます!!そう言って頂けるのはもう最高に嬉しいです!!ありがとうございます!! (2017年12月19日 19時) (レス) id: 57ead714e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あねもね | 作成日時:2017年8月7日 11時