＊ ページ34
「は、はぁっ、…っつ」
過去の記憶が勢いよく頭の中に流れ込んでくる。
暗くて、寒くて、暗闇の奥から何かが俺を襲ってくるような、得体の知れない恐怖。
雷の音が実際に鳴っているのか記憶の中の音なのか分からない。
分からないけど、ごろごろ、どんっと身体に響いている。
「〜〜っ、ひ、っぅ…」
助けて、誰か。
怖い。こわいよ、ねえ。
「、…ょ、た、はぁっ、」
舘さん。
涼太。
…りょうた。
宮「翔太、大丈夫だよ、ゆっくり息吐いて」
「ひっ、は、…はぁー…っゃ、や、」
宮「うん、大丈夫大丈夫、俺がいるよ。…ごめん照、スマホのライトつけてくれる？」
岩「了解」
震える手をぎゅっと握って、背中を優しく撫でてくれる。
その手がとても温かくて、どうしようもなく安心した。
速くなってしまった呼吸がだんだん落ち着いてくる。
かけてくれる声と、触れてくれる手と、すぐ側にいてくれる存在がありがたくて、優しかった。
消えてしまいそうな意識は消えずに済んで、ぎゅっと瞑っていた目をゆっくりと開けると、小さいけれど温かい光が俺を照らしてくれていた。
…あ、暗く、ない。
宮「…落ち着いた？」
「……りょ、うた」
宮「うん、大丈夫だよ。すぐ直ると思うから」
岩「翔太平気か？この後収録行けそう？」
「…だぃ、じょうぶ」
スマホのライトに照らされる2人の目は心配そうで、油断したらまた震えそうな身体に力を込める。
それに気づいたのか、隣にいた舘さんに声をかけられた。
宮「我慢しないで。そんな簡単にトラウマが消えるわけないでしょ」
「、でも」
岩「ん、翔太に何があったのかは分かんないけど、舘さんが言うなら無理しないほうがいいんじゃない？」
宮「マネージャーに伝えて、翔太はゆっくり休んで」
有無を言わせないような彼の言葉に、俺は黙って頷くしかなかった。
するとパッと楽屋の電気が元に戻り、一気に視界が明るくなる。
照がマネージャーのところに行くと楽屋を出て行き、部屋には俺と舘さんの2人きり。
背中を撫でる手が止まっていないことに気づいて、恥ずかしくなって彼から少し身を引いた。
「も、もう大丈夫だから」
宮「そう。…ねえ、帰り、家に1人で大丈夫？」
「………、く」
宮「うん？」
「…涼太ん家、っ行く」
宮「うん、分かった。鍵渡しておくね」
たぶん、俺のトラウマは一生消えない。
だけど彼が側にいてくれるから、一生大丈夫なんだ。
完
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 851人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
同期ゆり組担 - さんかっけいさん、ありがとうございました。とてもおもしろかったです！投稿、お疲れ様でした。 (2023年3月21日 20時) (
レス) id: ecb79bbb8a (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - 同期ゆり組担さん» リクエストありがとうございます。書かせていただきました！若干内容の差異はあるかと思いますが、ご満足いただけると幸いです！ (2023年3月21日 16時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
同期ゆり組担 - またもや、リクエストよろしいでしょうか？ あべちゃんが５人のお兄ちゃん達にわがままを言いまくって困らせてかまってもらう、というお話が見たいです。細かい設定はお任せします！よろしくお願いします！ (2023年3月6日 23時) (レス) id: 67b27e02af (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - 同期ゆり組担さん» こちらこそありがとうございました！ (2023年2月23日 12時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - Mさん» ご感想ありがとうございます(^^♪ 励みになります！ (2023年2月23日 12時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さんかっけい | 作成日時：2023年1月28日 3時
